眠り姫の桃源郷

鏡花水月

第1話 学校は

学校はすごく嫌い。

 いくら考えても、教えてもらってもずーっとわからない問題も、とんでもなく多い課題も、助けてくれない先生も。寒い制服も全部全部。


「アヤー、起きなさいよー。早くご飯食べにきてー。」

 朝からお母さんの声が響いている。

 耳に、頭に、心にその言葉が刺さる。

 暖かい布団に別れを告げ

 ずんと重い心のまま、私は学校に行く支度を始める。


 学校なんてなかったらいいのに。

 免除されたらどれだけ幸せだろうか。


 そんな調子のまま、私は学校に着いた。

「おはよ〜アヤ〜っ。」

 ほのちゃんがした挨拶に私も返す。

「おはようほのちゃん、今日すんごい眠い。」

 他の友達も集まってきて、「わかる」とか「明日テストとかだる」「コンニチの睡眠時間は3時間〜」とか口々に言い合って、チャイムがなったから散る。


 別にいじめなんてないし、すごく嫌いなやつがいるわけでもない。

 でもずっと気が重い。


 数学とか、そういう静かな授業になると、

 だんだん惨めな気持ちになってくる。

『頭がいいことが人間のいいところなのに、私はなんでこんなに頭が悪いの?』『なんですぐものをなくすの?忘れるの?』『クズだなぁ、、、私ってゴミだなぁ、、、』『本当は死んだ方がいいんだろうなぁ、、、でも死んだら縁起悪いから、、、』

 みんながこんなこと思ってなんかないってわかっててなお、それをつくづく私は感じてしまう。

 やっぱクズじゃん。だからゴミなんじゃん。


 授業も全部終わって、終礼をして、みんなで帰る。

 みんなで馬鹿笑いして、みんなで、、、

 楽しくないわけじゃない。私も笑ってる。

 辛いわけじゃない。悲しいわけでもない。


 だけどふと我に帰った時、心に穴を感じる。

冬の冷たい風が私の中を通り抜けていった。

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