第17話
「ごめんなさい、待たせちゃったわね」
会社近くのカフェへ慌てた感じでやってきた課長。
「いえ、そんなに待ってないですよ」
「今日は頑張ったんだけどね、定時には終われなかったな」
きっと普段はもっと遅い時間まで働いているんだろうなと思わせる言葉。
「いつも遅くまでなんですか?」
「えっ、いえ、そんなことは……ははっ」
部下には出来るだけ残業しないよう勧めているので、本当のことは言い辛いようだ。
「さぁ、行きましょうか」
その話は終わりというように、スッと伝票を持ち席を立つ課長。
「あっ、私が飲んだものなので私が払います」
「いいわよ、待たせたお詫び。それに今日は奢るって言ったでしょ」
「何処へ行こう、何食べたい?」
昨日の今日なので、二人で話し合うこともなくお店も決めていない。
「あの、もし良ければなんですけど」
「うん」
「課長がよく行くお店へ連れていって欲しいなって」
与えられたチャンス、少しでも課長のことが知りたい。よく行く場所、好みの味、好きな雰囲気。
「私がよく行く? ん〜わかったわ」
そこは、どこか落ち着ける、ホッとするような場所だった。
小料理屋と定食屋の中間くらいのお店かな、テーブル席は2つあって、あとはカウンター席。そのカウンターの1番奥に並んで座る。
「何にする? 洋食もあるけど和食、煮魚とかも美味しいのよね」
「本当ですね、美味しそう」
メニューの写真を見ながら何を食べるか悩む。
「決まった? 私はサバの味噌煮定食にするわ」
「私はぶりの照り焼き定食で」
「あと、お刺身の盛り合わせも美味しいから頼んで二人で食べましょ」
「ねぇ、ガッカリしてない?」
食事をしながら雑談の途中で課長が漏らす。
「何がですか?」
「このお店、ちょっと地味かなって。お洒落なイタリアンレストランとかの方が良かったかなって」
「どうしてですか、凄く美味しいですよ!」
「そう? そうよね、私もここの料理が本当に好きで飽きないから何度も通っちゃうの」
自分が褒められたように嬉しそうに笑う。
「リピしたくなるの、わかります」
「でしょ、居心地も良いわよね」
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