燃えろよ、燃えろ

雨宮 徹

燃えろよ、燃えろ

 私には双子の娘がいる。真紀子と明子。二人とも大学生だ。


 姉の真紀子は出来損ないで、いつまでも自立せず親のすねをかじっている。


 一方で妹の明子は勉学でもトップクラスで、私の誇りだ。なんでこうも出来が違うのかしら。


 別れた夫には浪費癖があって、とても苦労した。パチンコに競馬。負ければ負けるほど、あの人はのめり込んでいった。


 挙げ句の果てには借金をしてしまった。今でも私が借金を返済している。真紀子もあの人の悪いところに似てしまったのだわ。


 私はいい加減、真紀子に自立して欲しかった。このままでは、我が家の家計は圧迫され、私の老後の貯金が減っていく一方だ。


 なにかと理由をつけて、真紀子に一人暮らしをすすめても頑として首を縦には振らない。出来損ないの寄生虫とは、とっととおさらばしたいのに。



 そんなある日のことだった。娘と言い争いになった。


「あなた、勉学が疎かになっていないかしら。遊びほうけるのも、いい加減にしなさい!」


「お母さんが口出しすることことじゃないわ!」


「事実を言っただけよ!」


 私の娘が勉強を怠るなんて、あってはならない。ご近所さんに知られたらと思うと、私はいつになく言葉が荒くなった。


「お母さんのバカ!」  


 激昂した娘の平手が頬を直撃する。


 いつの間にか目の前には腹に包丁が刺さった娘がいた。血がドクドクと流れている。あたりは血の池だ。このままでは、私は殺人者として逮捕されてしまう。


 そうだ、事件に巻き込まれたことにすればいい。我ながら名案だわ。でも、どうやって死体を片づけようかしら? 何かいい方法があればいいのだけれど。そうだわ、いっそのこと死体を燃やせばいいんだわ。珍しく悪知恵が働いた。


 私は証拠隠滅のため、夜の河原で死体を燃やすことにした。早速ドラム缶を用意して娘の死体を燃やす。


 焼死体であれば、身元はバレないし、事件に巻き込まれたと警察も考えるだろう。これで、優秀な明子と二人暮らしができるわ。


「燃えろよ、燃えろ。出来損ないは、消えればいいのよ。この炎と一緒に、忌々しい思いでともおさらばよ」私はひとりごちた。


 娘を殺したというのに、気持ちは晴れやかだった。人殺しってみんなこんな感覚なのかしら。でも、これでさっぱりしたわ。これからは素敵な毎日が私を待っている。



 次の日の朝だった。明子にしては珍しく遅く帰ってきた。


「どこをほっつき歩いてたの? 夜に出歩くなんて、危ないわ。明子はそんな子じゃないでしょう?」


「お母さん、ボケたの? 私は真紀子よ」

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燃えろよ、燃えろ 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993

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