世界規模のデスゲームが始まりましたが、世界の命運は誰かに任せて俺はコタツに入っています。
@neko_taile
第0話
令和のある日、空に巨大な文字が表示された。
《残存人数:8,650,312,113》
そして現実世界にモンスターが現れるようになった。
そう漫画やゲームでよく見かけるスライムやオークがこの令和時代の現実社会に当たり前にスポーンするようになったのだ。
その日の夜の内に日本トップの襟神田総理は滝のような汗をハンカチでかきながらテレビで会見を開いた。
彼の話を要約すると、詳しくは説明できないが全人類を巻き込んだ
ゲーム。すでにモンスターに襲われ犠牲になった方もいるのにそう表現するのは不謹慎だと記者に叱咤されていたが、レベルという概念、スキルの保有と行使、追加で説明されていった要素は正にゲームのそれだった。
襟神田総理は【
それに仰天し必要以上に取り乱した記者たちの様はまるでライターの炎に驚く原始人のようだった。
『現在、東京、アメリカ、北極の三か所に特別な大ダンジョンが出現しております。最奥のボスを人類がゼロとなる前にすべて倒すことがこの恐るべきゲームのクリアとなる条件です』
『クリアできればそれまでにゲーム期間内で失われてしまった命は帰ってきます。誰か一人でもいいのです…!生きて一人でもこのゲームをクリアできれば全員助かるのです!全国民の皆様どうかお願いします。我々にとっても今回の件はまだまだ未知なのでありますが、どうか協力していただきたい。クリア条件の一角、東京大ダンジョン攻略を国家一丸となって目指すことを───』
あの会見報道の日から二週間経った。
《現存人数:8,540,376,623》
空に浮かぶ現存人類数は思ったより大きく減りはしていなった。
しかし常に増え続け問題にも発展していた世界人口が下減に転じているのは着実に人類が滅亡に近づいている証拠であろう。
しかし日常生活にモンスターが現れるようになったものの俺達の生活はさほど前と変わりはしなかった。
学校は休校になっているが危険なモンスターが目撃されている場所に近づかなければ普段どおりの生活を続けることができた。
大人たちは当たり前に仕事へでかけるし、電気もガスも不自由なく利用できる、電車やバスの運行も変わらず平常運転。
最も出没して道端で見かけるスライムもちょうどサッカーボールぐらいの大きさで子どもたちが蹴って遊んでいるのを何度も見るぐらいだ。
当初は情報に踊らされ大人も子供もパニックになっていたというのにすっかり順応しきっている。これが人の強さというものなのだろうか。
俺はいま自室のぬくぬくのコタツに入ってテレビを眺めている。暖房器具を完備した自慢の部屋である。
───大勢が英雄になれるチャンスを貰った。
東京渋谷にできた大ダンジョンはトウキョーステイションと世界から呼称され、日本にはアジア圏中から力自慢たちが集結している。多くの人間は積極的にこのゲームの攻略に乗り気のようだ。ニュースではこの機会に二万人ほど仕事を辞めてしまった人間が出ているらしい。
実現したスキルと魔法とステータスは否応なしに人を魅了している。
学歴も立場も関係ない、全員等しくイチからスタートの競争にみんな自分こそがと信じて挑み出しているのだ。
そしてポコポコ死んでいる。
俺は御免だ。そんなシリアスな戦いは。
コタツの中で足が当たった。
相手は
俺は足で押す。
「痛いよぉ」ぼそぼそ文句言いながら六花は起き上がりコタツテーブル上のポットからコップにお湯を注いで自分だけココアを作り始めた。
こいつと俺は恋人関係ではない。
俺には別に彼女がいる。痩せっぽちの六花とは違って活発な素敵な子だ。
「僕にも作ってくれよ」
もうひとりの俺の部屋に居座る奴が六花に注文した。ベッドに座ってゲームしている男、木ノ下だ。
この二人はずっとここにいる。
「俺にも」せっかくなので俺も注文した。
「…」スゥ
無言のまま六花は飲みかけのココアのコップを俺の方に差し出し無言のまま再度またコタツの中にごそごそ潜り込んでいった。木ノ下は無視された。可哀想なので代わりに俺がココアを別に作ってそれを木ノ下に渡す。
寒い日のココアは増して美味だ。
窓から外をちらり見ると雪がチラついている。
温かい部屋でスローライフしているのが一番。
世界の命運は頑張る誰かに託して。
───俺はのんびり暮らすんだ。
これは、そんなダラダラしたお話。
決して俺は戦わない。
こんなふざけたデスゲームに参加する気はなく、この部屋に俺は居続ける。
世界規模のデスゲームが始まりましたが、世界の命運は誰かに任せて俺はコタツに入っています。 @neko_taile
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