4-4 デュラハンの謎かけ
「それで、アルベルト様、
そこが私にとっての疑問でございます。
首の無い騎士の姿に現れ、見た者を死に追いやるとされる呪われた魔物。
指を指された者は呪いを受け、近い内に死ぬと言われています。
その“指を指す”という
“
「はっきり言って、一方的にやられた。先程言ったように、まずはこちらから仕掛けて、相手の兜を破壊した。しかし、首がない事に驚いている内に、すぐ横に生えていた樹木を根ごと引き抜き、豪快にぶん回してきた」
「樹木を根ごとですか!? とんでもない怪力ですね!」
「まともに防ぐことが出来ず、吹っ飛ばされ、木に叩き付けられた」
よくもまあ、それだけの事をされて生きていましたね、アルベルト様。
普通死にますよ、丸太でぶん殴られましたら。
(……あ、もしかして、アルベルト様を倒す手段ってこれかしら? いくら右手に宿る死神の力であっても、処理速度には限界があるかもしれない。実際樹木を丸ごとぶつけられて、吹き飛ばされたようですし)
処理速度を超える大質量を以てすれば、その死神の黒い手を突破できるという仮説が成り立ちました。
もっとも、アルベルト様の倒し方など、“今”はどうでも良い事。
素知らぬ顔を決め込みつつ、話の続きに耳を傾けました。
「で、こちらがどう対処すべきか悩む間もなく、指を指された」
「ああ、“
「そうだ。私の右手に宿る力同様、どす黒い何かが心臓に突き刺さり、思わず呻いてしまったほどだ」
「その割には、まだご健在のご様子ですが?」
「そう、それなのだ。その
なんとも間の抜けた質問。
伝説の化物が、いきなりの身元調査ですか。
「アルベルト様は独り身。当然、答えは……」
「うむ。『いない』と素直に答えた」
「で、ありましょうね」
「すると、あちらは『では、少しばかり遊んでやるか。こちらの
「なるほど。完全に“遊ばれて”おりますね」
「まったくだ。だが、
これで人払いを拒否した理由が分かりました。
アルベルト様が求めているのは、
姦しい女達に聞いて、それを得ようという腹積もりでございましょうね。
「ここへ来る途中、
「当然でありましょうね。さしものアゾットも、怪物の呪いは専門外ですね」
「ならばと思い、やはり魔術に関しては、魔女に聞くのが一番だとここへ来た」
「……して、相手はどのような問いを?」
「奴はこう投げかけてきた。『この世でありとあらゆる女性が欲しがるものとは何か?』とな」
「この世でありとあらゆる女性が欲しがるものとは何か、ですか」
ここでさらに納得。
しかし、
ならば
私のみならず、ジュリエッタやラケスにも話を聞いてもらったのには、もっともらしい理由があったというわけでございましたか。
「それと更に追加で提案があった」
「追加の提案、でございますか」
「対峙していた
「典型的な魔女の装いですわね」
まあ、私は“娼婦”も兼業しておりますので、艶やかな服装で通しておりますが、魔女と言えば、やはり黒い
それが一般的な魔女の装い。
アルベルト様の前に現れたのも、その典型的な装束の魔女でございますね。
「でだ。奴はこう言った。『伴侶がいない独り身ならば丁度よい。先程の無礼の廉は許してやるから、我が妹を
「なるほど。つまり、“
「その通りだ」
事情を聴き、アルベルト様が焦る理由も分かりました。
どちらも選択したくないのであれば、答えを用意しなくてはなりません。
そのために“
ならば、こちらも答えは一つ。
ラケスもジュリエッタも“察した”ようで、私と同時にアルベルト様に頭を下げました。
そして、これまた同時に一言。
「「「ご結婚おめでとうございます!」」」
「おい!」
物凄く嫌そうな顔をしておりますね、きっと。仮面で隠れていますが、間違いなくそうでしょう。
でも、知りません。
できれば、伝説級の化物となんかに関わり合いたくないのですから。
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