第4話 牧真マホヨは、告白される
「好きです! ボクと付き合ってください!!」
告白された。
サラサラなストレートの黒髪で、爽やかでイケメン。
きっと女子にモテるんだろうな、と思った。
(きゃー)
とレイナが口を抑えてワクワクした目で見てくる。
うるさいわよ、せっちゃん。
男の子が真剣な目で見つめてくる。
私を好きと言ってくれるは、素直に嬉しい。
でも私の返事は決まっていて。
「ごめんなさい。今は受験勉強と魔法少女の仕事で忙しいから無理です」
私は告白を断った。
がーん、とショックを受けた表情になる。
恋人は欲しいけど、誰でもいいってわけじゃないから。
「だ、だったらまずは友達から」
食い下がられた。
そういうのは嫌いじゃないけど。
「間に合ってるんで、要らないです」
改めて断る。
「…………」
あまりにばっさり断ったためか、絶句している。
「……えっと……は、はい。わかりました」
なんとかくんは、とぼとぼ帰っていった。
「よかったヨー、マホヨちゃん! これで安心して魔法少女を続けられるネ! 今日もバンバン仕事をとってくるヨ!」
「とってくるな! 私は受験勉強したいの!」
使い魔に怒鳴る。
やっぱ、断らずに保留くらいにすべきだった?
でも、キープみたいな真似は嫌いだし。
うーん……。
「ねー、まほちゃん。さっきの彼、3組の村木くんだよ。サッカー部のレギュラーで結構モテる人なのに、もったいない」
「そーなの?」
他クラスに詳しくないので、彼が何者なのかは知らなかった。
というか、村木くんなのか。
木村くんじゃなかったわ。
名前間違ってた。
「そーだよ。彼氏を作って魔法少女を卒業するんじゃなかったのー?」
「うーん、じゃあれいちゃんは私に彼氏ができちゃっていいの? 今みたいに毎日一緒に勉強できなくなるかもよ?」
質問を質問で返しちゃった。
でも、ちょっと気になってる。
女の友情と彼氏との恋愛。
どっちをとるのか……
「まほちゃんが好きな人と一緒になれるなら、私は全力で応援するよ」
「……ありがと」
天使のようなレイナの回答に、私は恥ずかしくなった。
「でも、正直今日の彼は好みじゃなかったんだよね」
「じゃー、しょうがないかー」
私の正直な意見に、レイナは同意してくれた。
やっぱりちゃんと好きな人を恋人にすべきよね?
なんて考えていると、レイナが私の顔を覗き込む。
「なに?」
「ねー、まほちゃんってどんな男の子が好きなの?」
そんな質問をされた。
少しだけ考えた末。
「うーん、私より強い人かなー」
と答えた。
「え? まほちゃんより強いとか無理くない?」
「あはは、面白い冗談だネ、マホヨちゃん」
幼馴染と使い魔に同時にツッコまれた。
なによ、あんたたち!
「どこかにいるかもしれないでしょ!」
「魔法少女やってる間は無理なんじゃない」
「というか、その条件だと魔法使いしか当てはまらないヨ」
「魔法使いかー」
魔法少女は魔法使いだ。
期間限定ではあるが。
だから仕事の中で魔法使いと出会う機会がたまーにある。
「魔法使いの人って、大抵魔法少女が嫌いなんだよねー」
魔法使いは特権階級だ。
だから、突然変異で魔法社会入りしてくる異物である魔法少女がお嫌いらしい。
「そうなんだ?」
一般人のレイナは、ピンとこないようだ。
普段、魔法使いと会う機会なんてないもんね。
「魔法使いってほとんどが性格悪いよー。偉そうだし、こっちを見下してくるし、まじ、性格最悪だから」
「……それはマホヨちゃん、言い過ギ」
使い魔ががツッコむ。
うん、言い過ぎました。
ちょっと反省。
「じゃあさー、れいちゃんの好きな人ってどんな人?」
私は矛先を変えた。
「わたし?」
んー? と指に口を当てて首をかしげるレイナ。
可愛い。
ちなみに、答えはいつも決まっていて。
「まほちゃんみたいな、かっこいい人かなー☆」
私の手を握って、笑顔を向けてそんな事を言う親友。
毎回、こうやって誤魔化す。
「じゃあ、私もれいちゃんみたいな料理上手くて、優しい人がいい」
「両思いだー」
レイナが抱きついてくる。
といういつもの茶番。
「君たちはいつも仲良しだネー」
せっちゃんが「カー! カー!」笑う。
「二人はケンカなんてしたことがないんじゃないかイ?」
「そーでもないよ」
「そんなことないよ」
私とレイナは同時に首を振った。
「そう? ボクがマホヨちゃんの使い魔になって以来、二人がケンカをしたところなんて見たことがないけど」
「最近だとそうだけど、前にあったよね?」
「そうそう。確か幼稚園の時かな」
「昔過ぎないかナ?」
使い魔に呆れた声をだされる。
「確かれいちゃんが私と同じ人を好きになっちゃんたんだよね?」
「ちがうよー。私が好きだった男の子をまほちゃんが好きになっちゃったんだよー」
「えー、逆でしょー。私が先だって」
「ちがうよ、まほちゃんがあとだったよ」
「んー?」
「むむむ」
私とレイナが軽く睨み合う。
この話は、毎回決着がつかない。
どっちが先に好きなったのか。
れいちゃんが、あとからだったと思うんだけどなー。
「マホヨちゃんとレイナちゃんが同時に好きになるなんて、一体どんな男の子だったんだろうネ」
「さあー、小学校が違っちゃってもう顔も覚えてないんだよね」
「ねー」
「ちっちゃい頃の記憶なんてそんなものなのかナ」
使い魔が「カー!」と鳴く。
キーン……コーン……カーン……コーン
昼休みが終わるチャイムが聞こえた。
「じゃー、マホヨちゃん、レイナちゃん。午後の授業頑張ってネ」
使い魔はバサバサと羽ばたいて飛んでいった。
「じゃーねー、せっちゃん」
レイナが手を振っている。
「担当外の仕事持ってこないでよー!」
私は大声で釘をさした。
「もどろっか、まほちゃん」
「うん、れいちゃん」
私とレイナは並んで教室に戻った。
幸い、その日は魔法少女の仕事は入らなかった。
ずっとこんな平和ならいいのになー。
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