第229話 アジア予選最終日

U-18W杯アジア予選の最終日を迎え、日本は既に消化試合を迎えていた。既に1位通過が確定しており、現在は2位をタイとマレーシアとフィリピンが2敗同士で争っている。でもまあ、日本の最終戦の相手はフィリピンだから2位通過するのはタイかマレーシアでほぼ確定だ。


「久美ちゃんから連絡来てたよ。1試合目の三島東は7対2で、2試合目の日大産は6対3、3試合目の習志野は8対3で勝ったって」

「普通に全勝してるじゃない。全部、今年の夏の甲子園に出ていた学校よね?」

「うん。でも甲子園に出ていたからこそ新チームの始動は遅かっただろうし、夏の甲子園常連校も今の時期はそれほど強くないことも多いよ。それでも、合宿で疲労が溜まっている中で全勝出来たのは良い事だね」


1戦目は優紀ちゃんが、2戦目は久美ちゃんがそれぞれ完投をしている。今回は優紀ちゃんより、強打の日大産を3失点で切り抜けた久美ちゃんの方が成績として良いかな?3戦目は、島谷さんと宮守さんがリレーで抑えた。特筆すべきことは、宮守さんが2イニングを無失点で切り抜けたこと。


打撃陣も真凡ちゃんと私が居ない打線で6点以上を取ってるし、強豪校相手に打ち勝っているのは凄いことだと思う。久美ちゃん自身が疲れているからか、まだ詳しい試合内容までは入ってないけど、みんな頑張ったね。


「……誰も既読付かないってことは、全員寝ているね。久美ちゃんや聖ちゃんですら反応無いから、夕方なのにぶっ倒れているってことだよ」

「まあ、1日3試合は普通にハードよ。合宿中だし。それよりもそろそろ、集合時間よ?」

「そうだね。ラストも、気合い入れて行きますか。目指せ40号!」

「……一応、今日の試合だけで6本のホームランを打てば、40本には届くから非現実的とは言えないのかしら?」


11試合で34本のホームランを打った私のこれまでの成績は『81打席 77打数 77安打 34本塁打 四球4 打率1.000 OPS4.156』になっている。明らかに異常な成績のため、国内外から注目の的だ。隣にいる真凡ちゃんも打率8割ジャストに出塁率0.808だけど、私が異常過ぎて目立ってない。



フィリピン戦 U18W杯日本代表 スターティングメンバー


1番 二塁手 赤石(山梨学園・3年)

2番 左翼手 伊藤(湘東学園・2年)

3番 DH  本城(湘東学園・3年)

4番 中堅手 実松(湘東学園・2年)

5番 右翼手 大村(大阪桐正・3年)

6番 遊撃手 荻野(宝徳学園・2年)

7番 三塁手 内河(履陰社・3年)

8番 捕手  大橋(宝徳学園・3年)

9番 一塁手 広沢(統光学園・3年)

投手 芳田(多久大光陵・3年)



今日の試合の先発は2試合を投げて1失点の芳田さん。大橋さんのナックルの後逸が、前の試合ではたった1回だけだったので、ようやく大橋さんも芳田さんのナックルをちゃんと捕れるようになって来た。芳田さんの出来が万全なら、フィリピンが日本に勝つ確率は、万に一つも無いんじゃないかな?


そんなことを考えていたら、1回表にあっさりと1点を失う。ワンナウトから十中八九まぐれの長打が出て、3塁への盗塁を許し、内野ゴロの間に1失点。別にフィリピン打線なら、芳田さんは速球だけでも抑えられる、なんてことは無い。最速が120キロ台前半なのにストレート主体は流石に打たれる。


だから、全球ナックルになるのは仕方ない。あと、あのナックルを初見なのにバットへ当てることが出来たフィリピンの3番が凄かっただけだ。その後の4番は、バットに掠りもせずに三振。


1対0で迎えた1回裏。赤石さんと真凡ちゃんが連打で出塁すると、アジア予選の後半は絶好調で今日は3番に据えられた本城さんがスリーランホームランを打ってあっさり逆転。


そのまま私もホームランを打ち、大村さんも続けば3者連続のホームランになるところだったけど、大村さんは残念ながらセンターフライに倒れる。


ワンナウトになってから裕香ちゃんや内河さんが出塁したけど、8番の大橋さんの打球が好守に阻まれ併殺。初回は私のホームランまで何点でも取れそうな雰囲気だったけど、結局4点止まりだった。


試合はその後、順調に日本が得点を重ねていき、最終的なスコアは23対2となる。失点したのは初回の芳田さんと、中継ぎで出た仙台育徳の佐藤さんだね。最速137キロのストレートは、例年ならエースになってもおかしくないレベルだけど、今年は投手のレベルが高すぎた。


下手に四球で歩かせ続けて、失点をしてしまったから印象は悪い。たぶん代表に集まった投手陣の中で、1番コントロールが危うい選手だと思う。実質、今日がラストチャンスみたいなものだったのかな。


U-18W杯本戦の予選は4ヵ国で総当たりだから3試合だけだし、投手陣には余裕が出て来る。……変な組に入らない限り、この面子なら予選突破は確実だし、優勝したいね。

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