第163話 優勝候補
抽選会が無事に終わった次の週の水曜日に『月刊高校野球 神奈川大会完全ガイド』という野球雑誌の神奈川県版が発売されていたので、保存用と観賞用で2冊分を購入をする。いつも真凡ちゃんが見せてくれる奴だけど、今回ばかりは自分で買った。たぶん、湘東学園の生徒は結構な人数が買っているんじゃないかな。
特別版ということで、前半には北神奈川の高校が、後半には南神奈川の高校が載っており、湘東学園は春の県大会で優勝したからか南神奈川の高校のトップバッターになっている。……あ、これ単純にくじの番号順か。
「ここら辺一帯の書店からは、消えていたわね。私は買えたから良いけど、高谷が買えなくてショック受けてたわよ」
「1年生で買えなかった人の分も、私が買う時に纏めて注文しますので、後で何人が買えなかったのか聞いておいて下さい。あ、お金は徴収しますからね?」
「分かったわ。……朝練ついでに買いに行ったカノンと詩野が、2冊ずつ買ってるから1番近くの本屋からは無くなったんじゃない?」
「本城さんも2冊買ってたよ。1冊は実家に送るって言ってた」
昨年の東洋大相模は6ページ分もあり、紹介選手は6人だった。それと同じ感じで、今年の湘東学園も6ページ分で6人の選手を紹介している。その6人は私、本城さん、詩野ちゃん、真凡ちゃん、島谷さん、聖ちゃんの6人だった。島谷さんと聖ちゃんは、中学時代の知名度もあるけど関東大会で活躍したからだね。
写真が載っている人とかが複数買いしたり、実家へ送るように買った結果、近場の本屋からこの雑誌は姿を消した。久美ちゃんが後で纏めてネット注文してくれるみたいだけど、久美ちゃん自身は買えていたような……?
その勢いで横浜高校の方を見ると、キャプテンの柳楽さんを筆頭にこちらも6人の選手が載っている。中には2年生の人も居て、名前は町原(まちはら) 啓美(さとみ)さん。外野手としての紹介だけど、この人も最速125キロのストレートを投げる投手だったはず。
私と同じく二刀流というよりかは、投手でのレギュラー争いを諦めて外野手に転向した感じかな。練習試合とかでは投げているみたいだし、まだ投手としての道は諦めてないだろうけど、普通に打力が異常。春季神奈川県大会では、打率6割をキープしている。確か私達との決勝戦でも、タイムリーヒットを打っていたかな。
まあ、6割を超えているのは真凡ちゃんや聖ちゃんもだけど。私とか、春の県大会だけに限定すれば打率10割を達成していたしね。本城さんもドラフト候補として紹介されているし、湘東学園のチームとしての打力では最高評価を貰ってるよ。
「北神奈川の方が高校数は少ないのに、ページ数は多いね。東洋大相模、和泉大川越、統光学園に平塚高校が注目校かな」
「一応、分け方は強い高校が分散するようにしていたようですが、偏っている感じはしますね。春の県大会で、平塚高校が和泉大川越に勝っただけで平塚高校が注目されている感じはしますが」
「高校野球も、強いチームが必ず勝つわけじゃないしね。でも平塚高校は横浜高校に負けての春ベスト4だから、結構勝ち進みそう」
平塚高校が過剰に注目されている風に言う久美ちゃんだけど、それ以降も僅差とは言え勝ち続けていたのだから、接戦には強そう。エースの角田さんは普通に速い球を投げられるし、守備は良いしね。
載ってある北神奈川大会のトーナメント表を見ると、準々決勝という比較的早い段階で統光学園と和泉大川越がぶつかるようで、正直に言って大槻さんと友理さんの投げ合いは楽しみだ。間違いなく全国でもトップクラスの投手が投げ合う試合だから、この試合だけでも観戦しに行きたいぐらい。
……大会は同時進行で行われるから、湘東学園も勝ち進めば同日の同じ時間帯に試合があるけど。Aブロックで準々決勝まで勝ち上がって来そうなのは藤沢高校だとして、準決勝で当たるBブロックの山で強いのは横須賀港高校や横浜創志館ぐらいかな?
「今年はマネージャーも多く入ったし、偵察班もローテーションを組めるからより相手校の状態が分かるようになるね」
「昨年は、私1人で調べている状態でしたからね。今年は1年生マネージャーを別ブロックの強豪校の試合の偵察にも回せますし、サポートが多いので助かります」
1年生マネージャーは7人で、2年生マネージャーは3人。合計で10人のマネージャーがいることは本当に助かるし、夏の大会での試合様子を録画出来るのは嬉しい。ネット中継は1回戦からあるけど、出来ればバックネット裏からのビデオが欲しいからね。
試合を観るための映像と、偵察するために撮った映像は色々と違う。ビデオで撮る以外にも、選手の様子やベンチの雰囲気を感じ取って来てくれると非常に嬉しい。
私達は今回、6回勝てば甲子園に行ける。その道のりは去年よりもくっきりと見えているし、まずは初戦の相手になる平塚商科と平塚江洋の試合の日を待とうか。
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