月神の巫女

朝日屋祐

プロローグ

月神つきがみの采配を決める。りょうるい。しかとこの眼に月神を宿すのだ」


 暗い蔵の中。数本の蝋燭の火の匂いが鼻についた。二人は和装だった。袴を着て並んで、正座している。右側にいる短髪の長男は大きな目をしており、左隣には切れ長の目に長めの髪の弟がいた。


「遼。累。月神の再興さいこうを予期せよ」

「はい。承知しました」

 二人の声が重なる。


「遼。累。身体に月神を降ろすのだ。神託しんたくを告げよ」


 二人の身体に月神が降りた。累の四肢が燃えはじめた。累の掌に熱を帯びている。汗が吹き出し、累に月神が降りた。


「明日には俺の転入先に月神の花嫁がいます」


 累がまじなりを決する。青い目から、赤い目となる。

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