第13話
イエット公爵とボイド公爵の差配で両陛下と問題の五人は王宮に軟禁された。
眠れぬ夜を過ごした二人は翌朝退職届けの数を見て唖然とする。国土が四割無くなったと同じように、約四割の役人関係者が消えていたのだ。
婚約破棄騒動を起こした五人を裁く時間も惜しいと、彼らの希望通りノイタールとヒリナーシェを婚姻させ、ティスナーとヨルスレードとエリドはノイタールの側近にした。
だが、結婚式も挙げず、仕事も与えず五人と両陛下を離宮に監禁した。
七人は質素な食事と週一回の入浴に文句を言っていたが、質素な食事さえも止めると三日目に泣きながらそれらを懇願してきた。
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卒業式当日の婚約破棄騒動から二週間。シュケーナ大公領都の一際立派な屋敷で美しい娘と美オヤジ、美夫人がお茶をしていた。
「皆さんから卒業パーティーを奪うことになってしまって申し訳ないことをしましたわ」
マリリアンヌが目を伏せる。
「それなら、あの時の生徒たちをここに呼んでパーティーをすればいい。人数の関係上、親たちは無しで、な」
サイモンがウィンクすれば、マリリアンヌは笑顔をほころばせた。
「嬉しい! お父様! ありがとうございます」
「僕、かっこいい?」
「はいっ! とっても素敵です!」
マリリアンヌはサイモンの左隣に行くと頬にキスを落とした。
サイモンは図々しくも右の頬を突き出す。ケルバは微苦笑をしてサイモンの右頬にキスをする。
マリリアンヌは立ち上がり窓際に立った。そこからは壮大な建物が遠くに二棟見える。
「学園はこれまでと授業などを変えるのでしょう? 通える皆さんが羨ましいわ」
二棟のうち一棟は学園、一棟は役所である。
「マリリアンヌも通えばいいじゃないか。婚約者もいないし、自由だろう? 僕やケルバの手伝いをしてもらうつもりだったけど、学園でこれまでとは違う勉強をするのもいい考えだ。
時間のありそうな友人も誘うといい」
「よろしいのですかっ?!」
「ああ。初等部と中等部だけでなく、高等部も作りたいと思っていたのだ。その足がかりとしてやってみてくれると助かるよ。その代わり、高等部へのアイディアも報告してくれよ」
サイモンはマリリアンヌにウィンクした。
現代と比較すると、初等部は小学校中学校、中等部は高校、高等部は大学といったところだ。
「もちろんですわっ! わたくし、早速皆さんにお手紙しますわ。
キャビ。手伝ってくださいな」
「かしこまりました」
二週間後、シュケーナ大公家で若者たちの大きなパーティーが催された。
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「大公閣下。盟主様がおいでになられました」
「わかった。すぐに行く」
サイモンが応接室に行くと、待っていた御仁が立ち上がり恭しくこうべを垂れた。
「大公閣下におかれましてはご健勝のご様子。大変喜ばしく……」
「盟主殿。お気にさらず、お座りください」
二人は向かい合って座った。
「盟主などと烏滸がましくて……。私は旗印として担ぎ上げられただけですよ」
「ハハハ。そうですか。では、イエット公爵殿。お元気そうで何よりです。
やはり貴方が盟主となられましたか。よかったよかった」
サイモンが『盟主』として迎えたのはあの断罪された男子生徒の親の一人である騎士団団長イエット公爵である。
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