第208話 変革③
「ア、アアアアアアアアア! ァアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」
グオリエが叫ぶ。
魔法陣の光が強まると同時、グオリエの身体を光が包んでいく。
「ボクは……! オレは……! チガウ! ボクは……コンナ!!」
叫ぶグオリエは、なんとか魔法陣から抜け出そうとするものの、光が帯のようにそれを包んで離さない。
やがて、奴が手を伸ばすと――
「コロせ……! ボクを……! オレをコロせ……! ステラフィア……!」
「殺さないって言ってるでしょ!」
フィーアがそれを拒否。
その瞬間、グオリエは完全に光へ呑まれた。
――問題は、ここからだ。
「気をつけろよ、フィーア。グオリエの方はどうとでもなるかもしれないが、問題は呪本の方だ」
「解ってる。十年分の締め付けは、どれだけ危険か計り知れないもんね」
そう、ここまでは順調。
だが、正直俺達はその全てがうまく行くとは思っていない。
呪本とグオリエを切り離せたとして、呪本がそのまま消えるわけではないのだ。
そちらに関しては――
「従来通り、呪本を破壊するしかない」
俺のその言葉の直後。
魔法陣の光が産んだ、繭のようなものに変化があった。
一点の黒い染みが浮かび上がり、それが繭を染め上げていくのだ。
「やはり、呪本が反撃に打って出てきたな」
「あんまりそうなってほしくなかったけど、想定通り……だね」
呪本が抵抗するとすれば、自分を包む繭に攻撃を仕掛けることは想定内。
だから俺は、繭に突き刺さったままの剣を抜き去る。
黒い染みが剣に到達するよりも早く。
この魔術の鍵となるのは、騎士団から借り受けたこの剣だ。
特殊な魔術媒体として使えるこの剣は、俺の魔術を正確に発動させるための杖となっている。
とはいえ、既に魔術は発動した。
後に残されたこの剣の役割は……コア。
この剣が破壊されない限り、繭を完全に破壊することはできない。
結果、黒い染み――呪本はどういった行動に出るか。
その染みを、魔物の形に変化させていく。
繭を覆うそれは、いうなれば呪本の力そのものだ。
呪本に侵されたグオリエが、黒く染まっていたのと同じ理由。
だから、それを変化させればこうやって魔物を生み出すこともできる。
呪本によって、怪物となり暴走する連中もこんな感じの姿をしているそうだ。
そして、今グオリエは呪本から切り離されている。
あの繭の中で、意識を奪われた状態で保護されているのだ。
繭はグオリエを抱えたまま魔物になるが、魔物とグオリエはイコールではなく、そして繭は保護機能でもあるので魔物を攻撃してもグオリエにダメージは行かない。
これで、全ての準備は整った。
後は、あの魔物を倒すだけだ。
「殿下、準備は終わりました」
『ああ、こちらもすぐに動く」
そして、通信魔術で陛下に連絡をいれると、俺は魔物を見る。
さぁ、戦闘開始だ。
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