第198話 準備⑤
それから、俺は陛下と計画の最後の要を確認した。
他の内容は俺でも判断ができることだったが、これだけは陛下に確認して貰う必要があったのだ。
「うむ、理論上それで問題ないだろう。実証することができないのは、魔術師として遺憾ではあるが……これが必要になった時点で実証は成功していると言ってよいからの」
とのことだった。
ともあれ、これですべての準備は整った。
まぁ、騎士団の人たちは色々と準備があるだろうけれど。
俺のやるべきことは終わった。
後は、作戦決行を待つだけである。
「では、ハイム」
最後に陛下は、
「また会おう。作戦の成功、楽しみにしておるぞ」
そう言って、俺を送り出してくれた。
殿下とも執務室の外で別れて、俺はもと来た道を引き返す。
今日はこのまま、自室に戻ることにしよう。
そう、考えていたのだが――
「じー」
不意に、物陰から俺を見つめる影に気がついた。
フィーアが、そこにいた。
王城だというのに変化魔術を解いていない。
元々この辺りは、陛下の執務室などがある重要区画なので、フィーアの正体がバレて問題になる侍従は通らないそうだが。
それでも、なんでステラフィアに戻ってないんだ?
「ハイムくん、お話は終わりましたか?」
「終わったけど……どうかしたのか?」
「私は知っています、ハイムくんがああいう重要な場で誰かに気持ちを伝える時。ド直球に言葉を選ぶということを」
「……そ、それが?」
ジトっとした目で、こちらを睨むフィーア。
可愛らしいが、彼女の言いたいことが読めてしまった。
冷や汗が流れる。
「執務室で、ハイムくんがどーーーーんな小っ恥ずかしいことを言ったのかなぁって思って」
「い、言ってないぞ?」
「うそうそうそー! 絶対に言った! 正直内容も想像がつく!」
く……誤魔化せなかったらしい。
こっちを睨んでくるフィーアに、俺は視線を逸らすしかなあkった。
「まぁ、その、何? 恋人として? ハイムくんに愛されるのはとっても嬉しいですよ? でもですね、時と場合といいますか、情緒というものがあるでしょう!」
「いやぁ……時と場合って意味では、あの場でアレを言わない方が間違ってるし」
「そういう話じゃなーい! 私が恥ずかしいって言ってるの! ああもう、この後お父様に会わなくちゃいけないのに、絶対にからかわれる!」
それはなんというか……申し訳ない。
いやマジで、それを知ってたらもう少し取り繕っていたと思うんだが。
「ふんだ、いいもんね。こうなったらサボってやる。どうせこの時間のお父様は細かい書類を片付けてるだけで、いつ顔を出しても問題ないもん!」
「さ、サボる?」
「こっち来て! いいところ案内してあげる!」
そう言って、フィーアは俺の手を取って走り出した。
いいところって……彼女の家でいいところって……どこだよ!?
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