第183話 憎悪③
話は、グオリエとの会話内容に移る。
「グオリエは言っていた。俺にはグオリエが呪本に適合した理由は、絶対に解らない……と」
「どういうことなんだろう」
「それこそ解らないが……だからこそ、グオリエが俺の眼の前に姿を表したのは、これが原因なんじゃないかと俺は考えてる」
グオリエが俺の前に姿を見せたことには、必ず理由がある。
でなければ、わざわざ手の内を晒す理由がない。
そして、あの邂逅でグオリエが見せたのは、その能力と俺に残した言葉だけ。
フィーアに対する執着は関係ない。
俺とホーキンス殿が憎い。
そして――”俺には絶対に解らない”。
「それって……ようは、グオリエにとって呪本に適合するだけの感情が、ハイムくんには絶対に共感してもらえないってこと、かな?」
「普通に考えればそうだろう。加えて、奴は俺とホーキンス殿が憎いといった」
だからこそ、字面だけ受け取ればグオリエが呪本を手にした理由は俺への嫉妬ということになる。
それはもちろん、奴が嫉妬する理由なんて俺にはさっぱり共感できないのだから。
「……でも、そんな単純なものではない気がする」
「同感だな。だったら、絶対に解らないなんて言わないはずだ」
だからこそ、断言できる。
「だからグオリエが呪本を手にした理由は普通じゃない。たぶんもっと、俺達が聞いたら何だそれは、って思うような理由のはずだ」
「なにそれ……ふざけてるの?」
「本人にとっては、至って真面目なことなんだろう」
ただ気がかりなのは、呪本に適合した、今のグオリエの態度だ。
あまりにも冷静過ぎる。
呪本に適合したにしては、話が通じすぎるのだ。
「そうなってくると、あまり気は進まないんだが……」
「うう……そうだよね、調べるしかないよね」
二人して、苦い顔をする。
正直、これはあまりやりたくはない。
いや、グオリエをどうにかすること自体は別に嫌というわけではないのだ。
仮に呪本の適合をどうにかできたら、それはかなりの功績になる。
何もマイナスばかりではない。
俺達が避けたいのは――
「でも、グオリエの内面とか、私知りたくないよーっ!」
「まぁまぁ」
そのために、これまで散々色々あった相手の心情を理解する必要があるという点なのだが。
とはいえ、何も奴の過去を一から掘り下げる必要もないだろう。
「……まずは、ホーキンス殿に話を聞いてみよう。あの人だって、俺達が考えているようなことは考えているはずだし」
「目的も一緒なら、協力もしてくれるはず……か」
とりあえず、できることを一つずつやっていくことに決めるのだった。
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