第114話 傭兵団②

 月に一度、俺は故郷の人たちとやり取りをすることになっている。

 お互い、近況がわからないと不安になるだろうということで。

 故郷の人にとっては、自分たちの代表が王都で活動しているのだ、気になることは多いだろう。

 公の面でも、私の面でも。


 俺からすれば、故郷の話が解るというのはありがたいことだ。

 単純に、俺がいない間故郷がどうなっているかを知る方法はこれしかない。

 故郷に帰った時、いつの間にか知り合いが団を去っていましたとか言われても困るのだ。

 せめて、一言くらい言葉を送りたい。


「とりあえず今月は……そうか、もう下の世代がダンジョンに潜り始めるころか」

「ダンジョン? 傭兵団って感じだー」

「うちは、十二になると、引率ありでダンジョンに潜るんだよ」

「ハイムくんは?」

「なぜか俺が引率をすることになった」


 そりゃ、当時から下級魔術の上級化くらいなら使えた俺は初心者向けダンジョンを潜るのには過剰戦力だが。

 なんで初めてダンジョンに潜るやつを引率にするんだよ!

 まぁ、何もなかったけどさ……


「昔から、大人たちの俺に対する無茶振りがひどい」

「子どもの頃から、大人並みにできちゃうんだもん。期待しちゃってるんだよ……」


 他には、俺より一つ上の世代の団員が独立したり。

 逆に結婚して身を固めた元団員が戻ってきたりと、色々と変化はあったようだ。

 とはいえ、概ねは普段と変わらない内容が殆どなのだが……


「……問題は、返事だよな」

「返事かぁ」


 向こうの方は変わりなくとも、こっちはあまりにも変化が大きかった。

 何せ、この国のお姫様と付き合い始めてしまったのである。

 どういう変化だよ。

 そもそも本当のことを言えるわけ無いだろ。


「前回はどうしたの?」

「その頃は、フィーアとはまだ付き合ってなかったから、当たり障りのないことを書いた」


 その少し後だったからな、フィーアに告白したのは。

 そこからグオリエとのアレがあって、今に至る。


「とりあえず……お父様に相談かなぁ」

「多分、フィーアと付き合ってる、ってところまでは書くことになりそうだ」


 ステラフィア王女と付き合ってる、ならともかく。

 フィーア・カラットと付き合ってる……となったらまぁ、ギリギリなくはない。

 何にしたって、フィーアの言う通り陛下に相談するしかないだろう。

 俺達の関係を真に保証してくださってるのは、あの方以外にいないのだから。


 なんて話をしつつ、今日はフィーアと別れた。

 初バイトの日だったというのに、最後はなんか別の話になってしまったな、とか思うのだった。

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