【第5講】〜願いと愛と3〜

 璃美は櫂斗の元へと駆けつける。

 駆けつけようとした、が正しい。どこにいたのか分からなかったのだ。

 救護室の人に聞くと「彼はなんともないから外にいる」と暗くなった外を指していた。

 外へと駆けていくと、櫂斗が一人灰塗れになりながら座っていた。

「なんで」

 嫌な予感が璃美の頭を駆け巡っていた。

 あの場に人はいただろうか。


 璃美の気配に気づいたのか、櫂斗は振り返り、小さく声を出した。よく見ると櫂斗はハンカチを握っていた。

「誰か、いたの?」

「ああ、君の知らない男の子だよ」

「殺したの?」

 残酷なのを分かった上で璃美は聞いた。

「そう、僕が殺したんだ」


 ハンカチを強いようで優しく握りしめている。

「その中に灰が?」

「君がいない間、一緒にいてくれた子なんだ」

 イェスなんだろう。璃美はそっと櫂斗に近づいた。きっと長い時間と共に死が付き纏ってきた人なのだろう。

「……別に死んだから居なくなったわけじゃない」

 綺麗事だ。分かっていた。

「ーーもう、僕には君しかいなくなってしまったな」

 どうしようもない事実は二人の地面に落ちていく。璃美も櫂斗も天涯孤独だ。亜樹だって分からない。そんな世界だ。


「本当に助けて欲しかったのは、僕だったのかもしれないね。

 幼い王子様には悪いことをしたな」

 ハンカチをしまうと、璃美を見るように立ち上がり、目線が交差したまま高さが逆になる。

「一緒にいてくれるだろうか」

「まだ、複雑だけど、そうなるなら」

 櫂斗は素直だね、と笑って向こうを見る。


 振り向くとそこには今までに見たことのない顔をした亜樹が立っていた。怒っているような、やるせないようなそんな姿だ。


「どうしたのそんな顔して」

「……いや、仕方ない」

「”仕方ない”だろうね」

 櫂斗は亜樹にバッサリと言う。

「姫とはどうなんだい?」

「性格が悪いね」

「長生きですから」


 亜樹は仕方ないか、という。

「俺が王様になって、二人のこと自由にしてやるよ」

 いつもの自信家が居なくなったような笑顔だった。

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