第2話 俺なんかで良いのか
斗真視点です。
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俺、本田斗真。何処が取り柄というのが無い普通の高校二年生。俺には幼馴染がいる。
名前は榊原美緒。幼稚園、小学校、中学校と一緒だったけど、同じ高校に行けるほど頭が良くない俺を一緒に行きたいからと強引に俺に勉強を押し付けて来た隣の家に住んでいる女の子。
だからと言ってあいつが嫌いなわけじゃない。大学も同じ所に行くって約束した。でも同じ大学に行けるかは俺の頭次第だ。
俺は、陰キャとか陽キャとかいう部類でもない。友達も一杯いるし、本当にそこら辺にいる男子高校生。
そんな俺が、夏休みの宿題も…なぜか美緒と一緒にさせられて七月中には終わってしまった。
だから夏休みは暇でしょうがない。幼馴染とは言え、一緒に遊んだりはしない。いや強引に一緒にプールに行かされたか。美緒はスタイルもいいし、世の中で言うと可愛い部類だろう。
普通おかしいと思うかも知れないが中学までは一緒に風呂にも入った。全く異性を感じない訳でもないが、それで何をする訳でもない関係。
だからその内、俺なんかに飽きて格好いい男と一緒になると思っている。まあ俺はそれまでのつなぎだろう。
そんな俺だから夏休みも八月十日も過ぎた頃、好きな川べりをのんびり歩いていた時、自転車を置いて川べりのテトラポットの上に立っている女の子を見つけた。
随分川が好きなのかとても危ない所に立っている。気になって見ていると
えっ!足を滑らしたのか飛び込んだのか分からないが川の中に落ちた。俺は急いで女の子が落ちた場所に行くと
くそっ、水が巻いている。まだ、体が水の中に見えている。一瞬周りを見たが気付いている人は誰もいない。仕方ない。
Tシャツを脱いでジーパンのまま飛び込んだ。
痛てぇ。運よくその子の体にぶつかった様だ。目の前にある物(体)を強引に掴むととにかく水面にそいつの体を上げた。重い。
駄目だ、頭が水の中だ。仕方ない。上半身を強引に持って頭を水面に上げた。そして俺も頭を水面に上げるとその子の口が水面に潜らない様にして岸まで持って来た。
その時には周りにいた人も気付いたのか岸の傍で
「君大丈夫か?」
「引き揚げろ、早く。救急車呼んで」
俺は女の子の体が岸に上げられるのを確認すると
はぁ、何とかなった。元々泳ぐのは好きだ。でも今回は厳しかった。水の中の人間って重いんだな。
「おい、君大丈夫か?」
「はい、俺は問題ないです」
岸に上がると女の子は幸い意識はあるようだ。良かった。でも溺れた女の子を見て驚いた。
「白石さん?」
「本田君なの」
その後は、良く分からないまま二人共救急車に乗せられて病院に連れて行かれた。
幸い俺は何処も怪我をしていなかったけど、白石は落ちた時に足をどこかに引っかけて怪我をしたらしく脛と腿のところに包帯が巻かれていた。
警察も来たけど、白石が川を見ていたら足を滑らせて川に落ちたと分かると簡単に帰って行った。
それはそれで良かったのだけど、全身ずぶ濡れの俺に病院が患者が着る洋服を貸してくれた。だけどこれじゃあ外に出れないし、洋服はずぶ濡れだ。
スマホは運よくジーンズの後ろポケットに入っていたけど、使い物になりそうにない。現金は持っていないから家に電話を掛ける事も出来ない。
どうしたものか考えていると足に包帯を巻いた白石が寄って来た。白石も患者が着る服を着ている。
「本田君、助けてくれてありがとう」
「白石か。何であんな所に立っていたんだ?」
「あそこなら川の中が見えるかなと思って。それで川の中を覗こうとしたら足が滑って」
「そういう事か、気を付けろよ」
「うん。本田君、この後どうするの?私、お母さんに電話したら、君にぜひお礼が言いたいって言っていて。だからこの後用事なかったら、もう少しここで待っていてくれないかな?」
「それはいいけど…」
「ねえ、なんであそこにいたの?」
「…暇だったから」
「暇だったから?」
「ああ、俺彼女もいないし、夏休み遊ぶほどの友達もいないから、散歩していただけ」
「えっ、本田君彼女いないの?榊原さんは彼女じゃないの?」
「美緒の事か。あいつは幼馴染。まあ仲は良いけど。それだけ」
「それだけなんだ」
本田君と榊原さんは付き合っていると思っていたのに。それじゃあいいか。
「ねえ、こんな時、こんな事言うの良いのか悪いのか分からないけど、私と付き合ってみる?」
「はぁ?俺が白石と?釣り合わないだろう。学年でも一、二を争う美少女が、何のとりえもない俺と付き合うなんて。大体なんで俺なんだ?」
「ふふっ、私を美少女なんて言ってくれるんだ。嬉しい。実を言うとね。前からずっと君を見ていたの。
クラスでいつも明るくて、男女関係無く優しい君を。顔なんて人の好みでしょ。でも君は榊原さんと付き合っていると思っていたら違うって言うから。私じゃ駄目かな」
こんな状況じゃあ、嘘告なんてしないだろうし。でもなあ。
「分かった。いいよ」
「うん、これから宜しくね本田君、あっ、斗真でいいよね」
「ああ、じゃあ理央でいいか」
「勿論だよ」
それから少しして理央のお母さんが思い切りの心配の顔でやって来た。怪我も大した事ないのが分かると、後は俺へのお礼で大変だった。
偶々居たから助けただけだと言ったのだけど、後で俺の両親にも挨拶に行くとか言われて、流石にそれは断った。
でも代りに家の傍まで送ってくれと言ったらなんと結構、家が近い事も分かった。学校とは逆方向に二駅だ。だからあそこにいたんだ。確か自転車も有った筈だけど。俺のTシャツは飛んで行ったかな?
それからというもの、夏休みという事もあり、毎日の様に会った。それで…まあ、お互い興味もあったし、初めてだし、してみるなんて軽い気持ちで夏休みの最後の日曜日にそういう所にいった。
お互い初めてで何して良いか分からず大変だったけど。それから学校が始まる前に話をして、学校の中ではイチャイチャしないこと、あくまで同じクラスの友達程度で過ごす事を決めた。
なんと言っても相手は学年でも一、二を争う美少女だ。俺が周りからどんな目で見られるか分かっている。それを考えての事だ。
でも学校の帰り、会える時は駅で待合せて他の街で会う事にしている。日曜日はあれも偶にしているけど誰にもばれない筈だ。
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