小林 大樹
「見て見てあっくん!あの門凄くない?」
前日まで振っていた雨も止み、金沢駅に到着した僕らを、シンボルである
「金沢ってこんなに都会なんだね。私もっと古風な街かと思ってた」
「僕も初めてきたからイメージ変わったよ」
僕たちは、大樹さんとの待ち合わせ場所である鼓門の下へと歩く。
「信!」
声のする方を向くと大樹さんが駆け寄ってくるのが見えた。
「緋奈子も悪かったな無理言って」
「大丈夫ですよ。って、大樹さん何か感じ変わりました? 前会った時はもっとツンケンしてたのに」
「ああ、あの時は悪かった。俺も最初は、ばあちゃんの気まぐれに付き合わされてイライラしててな。だけど、ばあちゃんの見立て通りだよ。俺はなんだかんだ言って東と梢の事は認めてたんだ。でもな、それを素直に認められなかった。ばあちゃんのシナリオとお前らがいなかったら、今の俺たちはない。改めて礼を言うよ」
「そんな、僕たちはただ、……」
僕が話している最中にヒナが口を挟む。
「よし!許す!」
大樹さんも笑顔を見せて雰囲気が和んだ。
「お前ら、飯まだだろ?寿司でも食いに行くぞ」
「やったー!お寿司お寿司!」とヒナがはしゃぐ。
僕たちは北陸の海の恵みに舌鼓を打ちながら、事件の詳細を聞いた。
事件が起きた日の朝、社長は事務所の奥にある部屋のセキュリティボックスに百万円を入れた。セキュリティボックスはホテルにあるような四桁の暗証番号を設定してロックするタイプであり、番号は社長の他に中村さんしか知らない。事務所は銀行のカウンターのようなものを備えており、来客はそのカウンター越しに事務員とやりとりをする。つまり、外部から来たものが現場の部屋に入るとは考えられない。部屋の床から犯人のものと
「詳しいことは、これから現地で説明するとして、ざっくりそんな感じだ。どう思う信?」
「今のところ、限りなく黒ですね。大樹さんは何で中村さんが犯人じゃないと思うんですか?」
「俺は今まで時間をかけて中村さんとやりとりしてきた。彼女がそんなことをするとはとても思えない」
「勘ということですか」
「恥ずかしながら、そういう事だ」
「中村さんとは話されたんですか?」
「ああ、彼女は私じゃないと言ってる」
「それなら、中村さんは不当解雇で訴えを起こせるのでは?」
「証拠が揃いすぎていて、逆に罪を被せられることを恐れている。そこまでいかなくとも、そんな話が公になれば再就職も難しくなるから泣き寝入りするしかないと諦めている。お前は彼女が嘘を言っていると思うか?」
「僕は中村さんという人を知らないので何とも言えませんが、大樹さんのことを信じます。まだ中村さんを犯人とするのは条件不足です」
「私もいること忘れないでね」
「恩にきる」
「まずは前田建設へ連れてってください」
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