EITOエンジェル総子の憂鬱（仮）29

銀行強盗初心者マーク

　＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝　この物語はあくまでもフィクションです　＝＝＝＝＝＝

　==============　主な登場人物　================

　南部（江角）総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

　南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。

　大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

　足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　石動悦子・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　宇野真知子・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

　河合真美・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　北美智子・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　久留米ぎん　・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

　小峠稽古　・・・　EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

　和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック７のメンバー。

　中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック７のメンバー。

　海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック７のメンバー。

　来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック７の総長。EITOエンジェルス班長。

　愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

　本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー。

　大前（白井）紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。

　芦屋一美（ひとみ）警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。

　芦屋二美（ふたみ）二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー。

　芦屋三美（みつみ）・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。

　小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

　真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。

　横山鞭撻警部補・・・大阪府警の刑事。大阪府警テロ対策室に移動。

　指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

　花菱綾人所員・・・南部興信所所員。元大阪阿倍野署の刑事。

　横山鞭撻所員・・・南部興信所所員。元大阪府警刑事。

　幸田仙太郎所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。

　倉持悦司所員・・・南部興信所所員。

　佐々一郎・・・大阪府警テロ対策本部所属。定年退職して南部興信所に転職した横山元警部補の後任として、EITO連絡係をしている。

　幸田（月山）澄子・・・飲み屋の女将。幸田所員と結婚した。

　友田知子・・・南部家の家政婦。芦屋グループ社員。

　用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレ。

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　=　EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す　＝

　==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==

　午前9時。EITO大阪支部。会議室。

　マルチディスプレイに、小柳警視正が映っている。

「マッチポンプ・・・ですか。」と大前は呆れて言った。

「うむ。今、副総監と村越警視正がリモートの記者会見を行っている。New tubeでライブ配信だ。このタクシードライバーなら、利用出来ると思ったようだ。鳩の餌は、現場から程遠くない、たばこ屋で売っていた。昔ながらのたばこ屋だ。盲点だな。鳩の餌を売る免許は要らないし、誰も気づかない。筒井君が写真を見せると、簡単に認めたよ。しかも、帳簿に記録されていた。販売帳簿は大学ノートだ。」

　小柳警視正の言葉に、みゆきが「警視正。鳩の餌ってポップコーンですか？」と尋ねると、「いや、それだと撒いたのがすぐ分かるだろう？最近は、ネットでも簡単に手に入るが、それらは穀物や種子が主だったもののようだ。それで、そのたばこ屋のばあさんのものは、草の種やミミズを乾燥させたものを磨りつぶした粉で、親戚の農家から仕入れたものらしい。ぱっと見は砂に見えなくも無い。現場は、始終車が通るし、跡形もない。だが、最近は雨が降ってないから、欠片が見つかるかも知れないから、鑑識が改めて出動した。浅川要巡査長は、大葉月百合子が主犯だったから、詳しい事は知らない。」と応えた。

「土地勘が初めからあった、ちゅうことか。被疑者にされたタクシードライバー名倉が発進した信号から、大葉月が追いついた信号までの距離は？」と総子が尋ねると、「ええと、約100メートルだな。」と小柳が応えた。

「そんなに近かったら、ウチでも追いつくわ。」と、珍しく紀子が言った。

「嵌めることは計画通り、の行動やな。殺しましたね、って言質取ったのは、ドライブレコーダー意識してか。あ、警視正。ドライブレコーダーが作動してたとしたら、本人も認めてるし、書類送検で終り違いますのん？なんで10日間拘留になるんやろ。本人が轢いてませんって言っても証拠があるやないですか。」と、大前は疑問を口にした。

「そこだよ、大前君。理事官も『鳩を解剖』してまで立件しようというのは異常だと、おっしゃっていた。そこで、レッドサマーのメッセージだ。」

「裏切り者、ですか。」「中津興信所の調査で分かったことだが、大葉月は半グレの多々良と繋がりがあった。そして、浅川巡査長と仲が良かった。10日間の拘留は、『時間稼ぎ』だ。大前君も知っての通り、普通の取り調べなら48時間以内だ。だが、疑いが濃い事案があると別だ。鳩の解剖も『ありもしない新たな証拠』を調べるという名目だ。」

「浅川が自白させたかったのは、ひょっとしたら、半グレの多々良と関係がるという証拠と違いますか？」と、入って来た花ヤンこと花菱が言った。

「で、浅川が大葉月に言われて探した書類は名倉の車に無かったから、鳩の解剖をさせた。見つからなかった事情は、あったんと違いまっか？」と、入って来た横ヤンこと横山が言った。

「流石、元刑事。で、見つからんのですか？」と大前が改めて小柳に尋ねると、「あったよ。多々良のデスクの上に。サインやメモした名刺が。冷静になれば、鳩のお腹に簡単に入る訳がないんだけどね。10日間はあっという間に過ぎ、レッドサマーは、裏切りに気づいた。先に送り込んだ兵隊を、後から送り込んだ兵隊に処分させた。肩を脱臼させたのは、レッドサマーのご褒美という訳だ。」と、小柳は応えた。

　画面に一美が割り込んだ。「今、警視庁から連絡が入ったわ。大葉月が自殺らしき死体で転がっていたそうよ、拘置所の廊下で。」

「らしき、か。主犯が大葉月なら浅川は、あまり組織のこと知らんかもな。10日間準備していたはずの計画をオジャンにされたら、レッドサマーも手加減せんわな。」と大前は感心した。

　今度は、真壁が割り込んだ。「緊急、緊急！！堺市で銀行強盗。場所は南海さかい駅駅前の『相当銀行さかい支店』。武装しているので、応援要請です。」

「よし、EITOの出番だ。コマンダー、チーフ。頼むぞ。データは送る。」

　マルチディスプレイは消えた。時間は午前10時だった。

　総子達がオスプレイに乗り込むと、用賀が待っていた。

「よろしゅう頼むで、にいさん。」「了解、あねさん。」

「あねさん？ウチはチーフや。覚えといてや。」「了解。チーフ。」

　午前10時半。南海堺駅が近くになると、EITO大阪支部の大前から連絡が入った。

「総子。JR堺市駅駅前の「相当銀行さかいし駅前支店や。同じく銀行強盗。」

「了解。ぎん。聞いたか？そっちは、ぎんのチームで対応してくれ。弥生、いずみ、聞いたな。」3人は元気よく、「了解、チーフ。」と返事をした。

　支店表にEITOエンジェルズ姿の総子達がやってくると、駐在らしい巡査と野次馬がいた。

「EITOエンジェルズ。えーと。」「隊長で結構です。お一人ですか？」

「はい、運悪く、今チンピラの抗争をやってまして、市警からはまだ誰も・・・。」

「で、中の様子は？」「何か揉めてるみたいです。」総子は短く説明し、連絡用のガラケーを巡査に渡した。

　総子はガラス張りのショウウインドウから中を覗き込み、「あゆみ、稽古。装備や。後は裏口。」と、短く指示を出し、張り番していた警備員に、「ちょっと、行って来ます。野次馬入らんように気を付けて下さい。」と言って中に入って行った。ジュン、あゆみ、稽古が続く。警備員は敬礼をして見送った。

「話、まとまったかな？」強盗の3人はカウンターの前で銃を構えた。

「お前ら、誰や。見ての通り、EITOエンジェルズや。あ。英語不得意やな。」

「う、五月蠅い。EITOやったらエマージェンシーガールズやろ。バッタもんか。」

「失礼やな。大阪支部はEITOエンジェルズや。もぐりかな？」

「うるさい。今、金を用意させてるんや。人質になりに来たんか？」「人質？」ふさこが見渡すと、10人の利用客が一塊で壁に寄り添っている。

「金はまだなんやな。」総子が後ろ手で合図すると、あゆみがICレコーダーを総子に渡した。

　そして、「あんたらは、金を要求したけど、銀行員は渋ちんでなかなか用意してくれへんかった。今、そう言ったんやな？」そう言ってICレコーダーのスイッチを入れた。

　リーダーらしき男は、意味が分からないので「はあ。」と応えた。

　総子は、スマホでどこかに連絡をし、ガラケーに電話した。「終りました。」

　すぐに、刑事らしき男が警官隊と雪崩込んだ。

「未成年。〇〇」中学です、『警部』。」と総子は短く伝えた。

　刑事は何か言いたげだったが、3人を逮捕連行した。みゆき、真子が利用客達をなだめている。

　それを確認した総子は、ぎんにインカムで確認した。「そっちは、どうや。」

「ナイフを持ってオロオロしてたので、確保して、人質を開放しました。通報は利用客でした。」という、ぎんの声が返って来た。

「じゃ、警察に引き渡したら、そっちも引き上げてくれ。」

　午前11時半。EITO大阪支部。会議室。

「アルフィーズスリー？何やそれ。またChot GPTか。」と、大前は一美に言った。

「仲間割れじゃ無さそうよ、コマンダー。さかいし支店の連中は、果物ナイフを持った10人は、さかい支店の3人の下っ端らしい。流石のChot GPTも、集合場所を間違えた場合のマニュアルは用意していなかったようね。」

「やっぱりな。地元でもよくタクシー運転手が利用客の『うろ覚え』で混乱して、間違えて運ぶのよ。昔からだってお婆ちゃんが言ってたわ。地元ではJR堺市駅のことを『しえき』って言って区別しているけど、余所から来ると、かえって分かりづらいらしい。」

「ああ。今日子は堺市出身やったな。結局、どちらの支店も被害無し、利用客も怪我が無かった。まあ、煽動されたとは言え、少年院行きかな？」

「ほな、一件落着のタイミングで。」と、花ヤンが花束を総子に渡し、横ヤンは何やら歌を歌った。南部はニコニコしている。

「一緒に行った幸田澄子さんは『想像妊娠』、チーフは『本物妊娠』。」と花ヤンが言うと、三美が「総子、おめでとう！！」と言い、皆も唱和した。

　総子は号泣し、大前と紀子は総子の肩に手を置いた。

　大前は、今は流産の心配をする段階じゃない、と自分に言い聞かせた。

　三美はスマホで知子に何やら指示を出した。

　―完―