記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

第97話 グレン

　◆ ◇ ◆ グレン

「ラフェ達が襲われている？」

　王妃はコスナー伯爵を襲うだろうと待機していたのに先にラフェ達を狙った。

　いや、多分両方いっぺんに狙ったのかもしれない。

　コスナー伯爵につけている者達からの報告はまだ来ない。

　とにかくラフェを助けるため急いで馬を走らせた。

　その小さな家の周囲は血の匂いがした。

　近所の人たちは激しい怒声と怪我をした者達の声に家から出ずそっと外を窺っている。

　おかげで他の人達に被害はない。

　アーバンとセザール（父）は今も戦っているようだ。

　俺の部下達もしっかり鍛え上げているので死んでいる者はいないが傷だらけで倒れている者はいる。

　相手はかなりの手練で少人数の中よく耐えてくれた。

「アーバン、ラフェは？」

　彼の近くに行き安否を確認した。

「約束を守ってくれていると思います」

「わかった、よく頑張ったな。早くコイツらを捕まえてラフェの所に行こう」

「はい」

　俺たちの加勢で人数が増えて破落戸達を一人も殺さずに全員捕まえた。

　証人は一人でも多い方がいい。王妃を破滅させてやる。

　たとえ陛下が少しでも罪を軽くしようと絶対に許さない。

　多少の傷の手当ては牢の中ですることにしてみんなまとめて馬車に乗せて王城の騎士団の牢屋に連れて行くことにした。

　急いでラフェ達のところへ行こうとしたら息を切らして馬を降りて俺のところに来た一人の騎士。

「グレン様、コスナー伯爵の命が狙われました！寝ているところを襲ったようです。襲ったのは屋敷で働く使用人で金で雇われたようです」

「命は？」

「かなりの出血があるそうです」

「ほんとあの王妃暗躍が好きだな。息のかかった使用人を何人かコスナー伯爵の屋敷にも入れ込んでいたんだろうな」

「うちにも数人おりましたしね」

「いくら守ろうと中に入り込まれれば限界がある」

「犯人は捕らえました」

「わかった、うちのタウンハウスにいる王妃の息のかかった使用人も捕まえておいてくれ」

「わかりました。全て捕まえておきます」

「絶対自殺させるな、そして証拠を消すためにそいつらを殺しにかかるかもしれない。特に放火は気をつけておけ。怪しいやつはついでに牢に入れておけ。王妃からの圧力は全て跳ね除けろ、何か言われたら国王陛下の言いつけだと言え！わかったな？」

「わかりました。アル様は？」

「今から助けに行ってくる」

「はい！アル様の顔を早く見たいですので早く解決してしまいましょう」

「わかったから早くいけ」

　この報告に来ている部下はラフェを助けた時に一緒にいた。だからラフェに対してもアルに対しても思い入れがある。

　タウンハウスで死にそうになっていたアルをずっと見守ってくれた騎士達はみんなアルを我が子に重ね大切に見守って来た。

　みんな二人を助けるために頑張ってくれた。

　何日も外でいつ襲ってくるかわからない目に見えない相手を交代で見張ってくれた。

　俺はその間タウンハウスで俺を襲ってくるであろう相手を待った。油断していると見せかけるためにのんびりとタウンハウスで過ごせば面白いように俺を襲ってくれた。

　それも毒入りの飲み物や下剤入りの薬なんて可愛い。

　寝ている時に首に刃物を突きつけられた。

　王妃もヤケクソになっているのだろうか？

　俺に集中しているのならそれでいいと思っていた。ラフェ達がアーバンのところでそのぶんゆっくり過ごせるから。

　なのにあの女は俺のこともコスナー伯爵のこともラフェのことも全て欲張って襲いやがった。

　絶対に許さない！

俺はアーバンと二人でラフェの元へ向かった。