第85話 グレン
◆ ◇ ◆ グレン
「貴方は………口封じの為俺を殺しに来たんですか?」
ジミーは俺の顔をじっと見つめて、そして、口を小刻みに振るわせながらそう言った。
「ほお、面白いな、なんでそう思ったんだ?」
ーーー俺がジミーを殺す?もちろん殺したいと思っている。あの二人を苦しめたんだからな。
だがせっかくだからこいつの話に乗ってみることにした。
「……国王陛下の近くにいた近衛騎士がアルバード様に薬を飲ませているところをわたしは見てしまいました。………だから、陛下に似ている貴方は頼まれてわたしを殺しに来たのでしょう?」
「………そうだと言ったら?」
ーーーはっ?こいつは何を言ってるんだ?
「わたしは何も話しておりません………どんなに脅されても怒鳴られても無言を貫いております、わたしが殺されるのは……嫌ですが……仕方ありません。
しかし実家にまで迷惑をかけるわけにはいきません。どうか………実家の者まで手を出さないで欲しいのです」
ーーーこいつがずっと黙秘していたのは、誰かに頼まれて殺そうとしたからではないのか?
犯人ではない?
俺はどう答えたらいいのか戸惑っていたら、ジミーは何か勘違いしたようで
「この王都に連れて来られて覚悟はしています………ただ何故あんな酷いことをしたのでしょうか?とても人懐っこくて可愛い小さな男の子です、わたしには理解できません」
ずっと黙秘を続けている男だから寡黙なのかと思っていた。しかし違っていた。
このジミーも何故アルを殺されなければいけないのか理解できないでいるようだ。
俺を陛下の近い者だと勘違いしている。俺が陛下に命を受け殺しに来たと思っているようだ。
ーーー陛下がアルを殺すように命令した?
ーーーいいや違う…….あの人は俺にこれっぽっちも興味はない人だ。
俺が死のうと家族を失い嘆き苦しもうと興味すら示さない。
ならば何故近衛騎士が?
「君は他に何か知っているのか?」
「わたしはアルバード様に薬を飲ませる姿しか見ていません。ちょうどアルバード様に会いに行ったら何か飲ませているところだったので建物の陰に隠れていました」
「……なるほど……そして何故バレたと思ったのか?」
「彼と一瞬目が合ったんです、それにアルバードくんのことは全て俺のせいになっていました」
わたしと言っていたのに俺に変わっている。感情のままに話している証拠だ。嘘はついていないようだ。
「わかった、話してくれてありがとう、まだ君をここから釈放することは出来ないがもう一度調べてみよう。
……ただ、俺と陛下の顔が似ていると誰にでも話すのはやめておけ」
俺はニヤッと笑った。
「次は本気で消されるぞ」
「貴方は……俺を殺しに来たわけではないのですか?」
「俺は辺境伯の騎士団の団長だ。今日はあんたを尋問するために来たんだ、殺し屋ではない」
「………えっ………違う?……………信じてくれるのですか?」
「信じているとまでは言い切れないが、調べてみる価値はありそうだ。確かにこの話は俺以外が聞いたとしても信用してもらうのは難しいだろう、あまりにも突拍子もない話だからな」
「………辺境伯の騎士団の団長………俺は気がついてはいけないことに気がついた?」
ジミーは俺の顔をまじまじと見ると、何かを察したようだ。
「お前、案外賢いな」
俺はもう一度ニヤッと笑った。
「ま、ここは快適とは言えないが殺し屋は簡単にはこれない。だから安心して過ごしてくれ。
部下に食べ物と寝心地のいいベッドを持ってくるように伝えておく。すまないがもうしばらくここで過ごしてくれ。
もしあんたが犯人じゃなければ外に出せば、本当の犯人があんたを殺しにくるかもしれない。
今犯人は自分はバレていないと安心しているだろうからな、顔を見たあんたはやばいだろう」
たぶんアルが殺されそうになったのは……俺のせいだ。
犯人は……くそっ、アイツしかいない。
近衛騎士を扱えるし情報も入ってくる。
俺は地下牢を急足で出て、タウンハウスを後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます