第83話  グレン

 ◆ ◇ ◆ グレン


 コスナー領は少しずつ落ち着きを取り戻している。中毒患者達は薬の処方により元の生活に戻りつつある。


 サリナル商会は完全に潰された。


 何も知らずに働いていた従業員は解雇され、薬師や売人達は捕まった。

 もちろん店主も捕まり、いずれこの国で裁判を行い、処罰を受けることになる。


 それまでは、店主と薬師達は奉仕で薬作りを課せられた。


 まだまだ中毒が重症だった者達は、解毒が必要だ。

 彼らは処罰される前にひたすら薬を作り続けることを強要させられている。


 シャーリーの男の友人達は、親達が出てきてなんとか息子達を助けようとしたが問題は国王陛下の耳にまで入ってしまったことを知ると、息子との縁を切ろうとした。


 しかし息子達から儲け話として一緒に甘い汁を吸った親達も捕まることになる。

 まだ本人達は知らないが、うちの団員が証拠集めをしている。


 そっちもそろそろ動き始めると言っている。







「エドワードとシャーリーはまだ泳がせているのか?」


 副隊長が王都へとやって来た。


「はい、本人達は犯人が捕まったのでもう自分たちは関係ないと安心しております」


「コスナー領のトップとしての責任はないと思っているのか?大体エドワードは何も知らないかも知れないが、コスナー領であれだけの利益をみすみす他の貴族達に渡すわけがないだろう。コスナー伯爵はかなりの利益を得ているというのに」


 俺は呆れてしまった。


 まだアルの事件が解決されていないのもあって、コスナー伯爵のことは気がつかないでいることになっている。


 俺たちのことを無能だとでも思って嘲り笑っていることだろう。


 だが今捕まえてアルのことをあやふやにすることは絶対に出来ない。


「ジミーもこっちに連れて来ているんだよな?」


「はい、どんなに脅そうと口を割りません。なんとかアルを殺そうとした理由を知りたいのですが……伯爵が関わっているのかシャーリーが関わっているのか、それとも別の人物?リオは多分何も知らないと思います。サリナル商会の店主もアルの件に関しては違うようです」


「そうか……俺が話をしよう」


「はい、ここに連れて来たことでジミーの気持ちに変化が起きればいいのですが……一応自殺防止で今も舌を噛まないように口は布で縛っています」


「ああ、まあ、仕方ないな。とにかく理由が分かるまでは死なれては困る、アルとラフェの苦しみに比べればそれくらいは我慢してもらわないとな」


 ジミーは何も語らず何度か自殺しようとした。このまま死なれればわからないまま、事件は終わってしまう。


 もし、ラフェ達を狙っている人間がまだいたら?

 そう考えると何がなんでも解決させたい。


 感情だけで団長が動いていいわけではない。だけど、この事件は幼い子供を狙ったんだ。


 いくらでも後で言い訳はする、あの二人に安心して外を歩かせてやりたい。


 俺はジミーがいるこのタウンハウスの地下牢へ向かった。

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