第39話 アーバン
◇ ◆ ◇ アーバン
なかなか会いにいけなくて数日が過ぎた。
まだ兄貴の情報は何も入ってこない。
ラフェに聞きに行くべきか、行くのをやめるべきか。
たぶん俺はただ顔を見てしまって会いたくて仕方がないだけだ。
少し離れたところからラフェの家を見ていると、後ろから肩を叩かれた。
「おい、最近ウロウロしている怪しい奴ってお前のことだろう?」
数人の男が俺を睨んできた。
ーー俺、怪しい男になっていたのか……
少しショックを受けながらも考えてみれば当たり前のことだった。
「ラフェとアルの様子を窺う怪しい奴がいるって聞いていたけど……」
そう言って一人の男が俺をジロジロと見つめた。
「あんた……アルの父親……なのか?」
「あっ、確かにどこかで見たことあると思ったらアルに似てるぞ!」
「ラフェを捨てた男か!」
「おい、箒を待って来い!ぶん殴ってやる!」
「箒じゃダメだろう?せめてでっかいスコップだ!」
「いや、木刀がいいんじゃないか!」
だんだん物騒になっていく話に俺は叫んだ。
「俺はアルの叔父です。そしてラフェの幼馴染です!」
「親戚なのか?だったらなんで今まで放っていたんだ!ラフェはここに来てからずっと一人で苦労して子供を育ててきたんだ。叔父で幼馴染だったら一番に助けてやるもんだろう」
俺は何も言い返せなかった。
いずれは……そう思ってひたすら仕事に励んだ。
でもそのいずれは、なんて言いながら何もしていない。
服の依頼なんてカッコつけてこっそりしても、ラフェの生活を助けたわけではない。
今ここで知らない男達に怒鳴られ説教されても何も言い返せなかった。
「俺は………」
「おじちゃん、いじめちゃだめ!」
足元で聞こえてきた声は……
アルバードだった。
下から俺を見つめる可愛らしい顔。
ぷんぷん怒って「だめだよ!このひと、かなしそーだよ」と言って俺の前に立って小さな腕を広げて俺を庇っている。
「アル、俺たちは別に虐めてないからな」
「そうそう、変な男がウロウロしていると聞いたから問いただしていたんだ」
「ほんとぉ?おじちゃんだいじよぉぶ?」
俺を見るアルバードの瞳はとてもキラキラしていた。
「ああ、大丈夫だよ、ありがとう。おじさん、お母さんに用事があるんだけど忙しいかな?」
「おじちゃん、おかあしゃんのしりあい?だったらおかあしゃんよんでくる」
俺は止めようとして思わず手を出して声をかけようとしたけどやめた。
会って話しをしたい。
いいきっかけだと思った。
周りにいた男の人達に、頭を下げた。
「アルバードとラフェを見守ってくれているんですよね?ありがとうございます。俺は何もしてあげられなかったずるい男です。今から彼女と話をしてきますが、ラフェに嫌な思いをさせるつもりはありませんので安心してください」
そう言ってもう一度頭を下げた。
「ラフェに何かしたらタダじゃ済まないからな!」
「はい、ずっと放っておいたことを謝りたかったんです。声をかけてくれなければ会う勇気すら出なかった情けない男です。
みなさんありがとうございました」
俺はやっとラフェに会う勇気が出た。小さな男の子の手のおかげで。
アルはニコニコしながら俺の手を握り家へと連れてきてくれた。
この玄関の扉を開ければ、ラフェがいる。
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