第17話
◇ ◇ ◇ ラフェ
馬車に乗って安心したのか熱が急激に上がってきた。
「ラフェ、家はここ?」
一般的な住宅が並ぶ場所に一軒だけ古びた家がある。
そこがわたしが住んでいる家。
「はいここです」
グレン様が物珍しそうに「へえ、中々趣きのある家だね」と言葉を濁した。
返事をしないといけないなと思いつつ、キツくて「そうですね」とだけ答えた。
とりあえずボッーとしながら返事をして
「わたし隣の家に行ってアルを迎えに行かないといけないので」とフラフラしながら向かおうとした。
「ラフェはこっち、グレン、ラフェの息子を連れてきてやってくれ」
「はいはい、了解です」
「えっ、でも、怪しい人だと思われるかも……」
「大丈夫!安心して家で待ってて」グレンが軽く答えて隣の家に向かった。
アレックス様が「ほら行くぞ」と言って我が家に一緒に向かった。
こんなボロ屋、辺境伯様内心嫌だろうな。
「ベッドは何処?」
「あっちです」
玄関から入って真正面の奥の部屋を指さした。
「何部屋あるの?」
「キッチンとこの今いる部屋と寝室、あと物置になっている部屋だけです」
キツイのにそんな会話要らない。
そう思いながらベッドに潜り込んだ。
「お水を入れてくるから」
アレックス様自らキッチンへ行きお水を持ってきてくれた。
そのお水をありがたくいただいていると「はい」と薬を渡された。
「この薬は熱冷まし!
医者が絶対熱が出るからと持たされたんだ」
と話してくれた。
うとうとしていたら
「おかあしゃん、おっかえりぃ。アルいいこ、してたぁ!」
あるの可愛い元気な声が聞こえてきた。
「ラフェ、大丈夫かい?」
隣のおばちゃんも心配してくれて顔を出してくれた。
「おばちゃん、ありがとうございます」
「いいのいいの、それより驚いたよ、突然貴族様がやってきたから!」
「心配かけてごめんなさい」
「あるのことは心配しなくていいから今は寝ていなさい」
「みんなありがとうございました」
なんとかお礼を言って、アルの手を握った。
「ねんねん、ねんねん、ねんねん、ねっ?♪♪」
またアルバードの作り歌が聞こえてきた。
そんな変な歌を聴きながら意識がなくなって眠りについてしまった。
◆ ◆ ◆ エドワード
王都に記憶がなくなる前の自分を探し求めるために来たはずだった。
だが気がつけばそのままシャーリー様のそばで護衛騎士として働いている。
実家のバイザー家に一度顔を出した。
しかし母親らしき人から、生きていることを喜ぶどころか
「エドワードはもう死んでいるの、貴方なんか知らないわ」と追い出されてしまった。
理由はわからない。
俺は一体何をしたのだろう。
今働いている伯爵家は、実家に顔を出した後も働かせてもらうことになっていた。
仕方なく伯爵家の王都のタウンハウスへと帰った。
「リオ、どうだった?」
「よくわかりませんが俺はエドワードではなかったようです。母親らしき人から俺の顔を見ても知らない人だと言われました」
「そう、じゃあ貴方が持っているそれらは貴方の持ち物ではなかったのね」
「たぶん……そうなんだと思います。あの屋敷に行ってもなにも思い出せないしなにも感じませんでした」
「そう……わたしは一月ほどしたらまた領地へ戻るの。護衛としてまた領地へついて来てくれたら嬉しいわ」
「あの……俺が誰なのか証明されない今、雇ってもらっても大丈夫なのでしょうか?」
「気にしないで、一緒にいられて嬉しいわ」
「………俺もシャーリー様を護衛させてもらえることを光栄に思います」
「リオ、記憶はどう?」
「王都に来れば思い出すのではと思いましたが全く駄目でした」
「わたしもお父様に頼んでみるわ」
「ありがとうございます」
結局記憶は戻らないし自分が誰なのかも分からず王都で滞在するのは一月ほどでまたシャーリー様の領地へと付き添うことになった。
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