第7話
◇ ◇ ◇ ラフェ
お腹の痛みもひどく意識を失っていた。
遠くから声が聞こえる。
「ラフェ、ラフェ」
エドワード?ねえ、エドワードなの?
とても寒いの、お腹も痛い。
赤ちゃんが産まれそうなの。貴方の子供よ。
でも貴方は子供ができたことも知らない……
わたしはこの子を守って生きていかなければいけないのに……弱いわたしは本当は貴方の元へ行きたいの。
わたしの初恋はアーバンだった。だけどエドワードが婚約者。わたしはずっとアーバンへの想いを封印していた。
結婚がはっきりと決まった時、アーバンへの想いは心の奥底に隠し、貴方と向き合うことで少しずつ貴方を本気で愛するようになった。
兄のような存在の貴方に恋心が芽生えた。
少しずつ貴方を愛するようになった。貴方もわたしを愛していると言ってくれた。
激しい愛で結ばれたわけではない。少しずつ歩み寄り少しずつお互い兄妹のような愛情から本当の愛に変わっていった。
「あなたを愛しています」
今は素直にそう言える。
なのに……わたしの前から消えてしまった。
これからのことを考えると怖い。
貴方との大切な子供をどうやって育てればいいの?
義両親にどこまで頼ればいいの?
わからない、どうしたらいいのか。
「ラフェ、しっかりしろ!お前は母親になるんだろう?」
エドワードの声?がわたしを励ます。
意識が戻り始めた。
うっすらと意識が戻り、目を微かに開く。
義両親がわたしを覗き込んでいた。
「やっと意識が戻ったのね?」
声が出ずコクっと頷いた。
「赤ちゃんが産まれそうなの?」
また頷く。ーー痛かったのはそう言うこと。
「お医者様も見えているわ。頑張るのよ」
お義母様が手を握り励ましてくれた。
ベッドに寝かされ何度も陣痛の痛みを耐えた。
まだ出て来る気配のない赤ちゃん。
痛みだけが増していく。
そして……どれくらいの時間が経ったのだろう。
憔悴した体に今まで以上の痛みが襲う。
「うっ…あ……あっ…………」
必死で痛みを堪えイキんだ。
何度も何度も。
エドワード、ここに貴方がいてくれたら。そんな無理なことを思いながら必死で子供を産んだ。
「おぎゃあーおぎゃあ」
産まれたばかりの子をわたしに見せてくれた。
ーー元気に泣いてくれた。
「ありがとう産まれてくれて」
わたしは赤ちゃんに向かってなんとか声を出してそっと優しく触れた。
すぐに赤ちゃんを洗い綺麗にして服を着せないといけない。
そう言ってお産婆さんがバスルームへと連れて行った。
お医者様がわたしを診察してくれた。
「よく一人で頑張ったね、今日は赤ちゃんが産まれた日でもあるけど君が母親になった日でもあるんだ。おめでとう」
「……わたしが母親になった日?」
「赤ちゃんと一緒にゆっくりと成長して行きなさい。そして赤ちゃんと一緒に周りに甘えなさい。君は一人じゃない、ほらここに家族が居るんだから」
わたしのそばには義両親が涙をためてわたしを見つめていた。
そして少し離れたところにはアーバンが心配そうにこちらを見ていた。
◆ ◆ ◆ エドワード
「今までお世話になりました」
ブレンさんに明日この村を出ていくつもりだと伝えた。
元々元気になったら王都へ向かい自分が何者なのか、家族はいるのか、調べようと思っていた。
「リオ、本当に出ていくのか?」
「はい、世話になっておきながら申し訳ありません」
「リーシャはお前との結婚を望んでいるんだ。せめて籍だけでも入れてからではダメなのか?」
ブレンさんまでどうしてそんなことを言い出したのだろう。
俺が返事をしようとしたら……
目の前が真っ暗になった。
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