Flowerload 花園の町

ホオジロ夜月

第1話 red rose

「お客さん来ないな〜」

 半田舎という表現がふさわしいこの街に私こと花園美紀は幼い頃から自分の花屋を持つのが私の夢だった。

「とりあえず店前を掃きますかね〜」

 私は店裏に置かれていた竹箒を手に取り店前の落ち葉を掃き出す。

「私がイメージしてた花屋さんと違う……」

 だけど実際自分のお店を持ってみてもお客さんは来る日はあってもそれ以外はこうして退屈な日が過ぎるのを待つばかり……

「すみません……今いいですか?」

「あっ…はい! いらっしゃいませ!」

 そんなことを考えていると今日一人目のお客さんが来てくれた! 私は竹箒を適当に置き捨ててすぐに接客へシフトチェンジする。

「実は真っ赤な薔薇を探していて……」

 お客さんはスーツを着崩しながら店内に入っていく。仕事帰りかな…それにしても赤い薔薇ね……

「少々お待ち下さい」

「ありがとうございます」

 私は店の中に置かれている薔薇の花束から特に綺麗に咲き誇っている薔薇を厳選した。

「うん。これがいいかな」


 早速私はその厳選した薔薇をもってお客さんに手渡した。

「ありがとうございます! 最近ここら辺に越してきたんですが花屋が無くて困ってたので助かりました」

「そうなんですね〜ちなみに誰かへ送るんですか?」

「ええ。妻がいまして。僕が毎年結婚記念日に送ってるんです」

「へぇ〜素敵ですね。いい日になるといいですね」

「ありがとうございます。では」

 そう言いながらそのお客さんは爽やかな笑顔を見せながら店を後にした。

「結婚か……イイなぁ」

 そんな愚痴を溢しながら私は掃き掃除に戻った。


* * *

「ただいま〜」

 陽気な雰囲気の声が玄関から聞こえて私は玄関に向かう。

「お帰りなさい。今日も仕事お疲れ様」

「ありがとう。綾野さん…これどうぞ」

 そう言いながら彼は私に一輪の赤い薔薇を手渡す。

「これって……」

「そうだよ。今日は僕たちが結婚して10周年だからね」

 彼は毎年結婚記念日の度に私のために赤い薔薇を毎日送ってくれた。

 そういえば高校生の頃も彼が私に告白してくれた時も赤い薔薇だったわね……

 いま思えばあの時の彼の目がとっても情熱がこもった瞳に惹かれてたんだっけ……

「ねぇ。ちょっと屈んで」

「? どうしたの?」

「いいから」

「わかった……」

 彼は困惑気味に膝を崩して屈んでくれた。これぐらいの高さじゃないとできないじゃない……

「それで、何を……」

 私は彼の頬に口づけをした。これは私が最大限できる私なりの愛情表現。

「え…え〜!」

 普段私がこういうことをしないからか彼は目を丸くしてとても驚いていた。

「私だってあなたへの愛情は情熱的よ?」

 


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