第2話
家に帰ると、ママが白いシチューを用意してくれていた。私があんまり好きじゃないタイプのシチューだ、、、
妹はすでに食べ始めていて、相変わらず食い意地がすごく、おかわりしていた。大好きな近所の八百屋の糠漬けも置いてあって、買ってきてくれたことがものすごく嬉しかった。いつものように笑いかけてくれながら、母も「今日はヘルシーで完璧だね!」と自慢げに話していた。
学校から帰ってきた私は鞄を自分の部屋へ置きにいき、二人のいるキッチンの方へ混ざった。一緒にシチューを食べ、母と妹とマツコデラックスの番組鑑賞に加わった。三人でこの番組を見ることは案外私たちの習慣になっていた。下ネタ多いし、結構汚いところもあるけど、それをテロップで紫にして面白おかしく放送しているのも面白い。この番組は本当にギリギリの線を常に走っている。今まで普通に放送できているのがすごいと思う。放送してくれなければ楽しみが減るから困るのだが。何より、地域事情や地域住民一人一人の事情に手厚く密着しているのが他の番組には絶対にないことだ。取材しに行った地域のニュースや道端で見つけた人の個人的ニュースを聞いたり、ものすごく暖かい番組でもある。
この三人でうるさくゲラゲラ笑いながら過ごす夕食は最高だ。
やがて見終わり、パパの悪口話をするという、別の趣味も繰り広げ始めた。
改めて考えるとひどいし、私たちのために日々長々と仕事を頑張ってくれているパパに対して失礼だが、素直にとても楽しい。申し訳ないけど、ネタになる話が多すぎるのだ。
「ブー、ブー」
電話がなった。
ママがうざいなーと言いながらパパから来た電話に応答する。
「なあに?」
母が優しく言った。
本当にこの夫婦はなんなのだ。ママはパパのことものすごく愚痴るし、実際に私と妹でパパの大嫌いなところで数時間は軽く潰せるくらいだ。そしてその趣味が講じてママも含めて話すぐらいにはママはパパの嫌なことが多いのに。なんだかんだ言ってママはパパのこと大好きだし、いろんなことを言われているのを知っているのかは知らないけど、パパはママのことが大好きだ。まあ、私たち3人の愚痴話会については知らなくてもママがパパの前とか、みんなの目の前で愚痴ることもあるからわかってるだろうけど。そんな愚痴をみんなでフル無視してたっけなー。
「はい、じゃあねー」
母が父との電話を切った。ママがパパとする夕食の時間帯の電話での毎回の反応のように、飽き飽きした顔をしていた。本当にテンプレだ。
「なんて?」
妹が聞いた。
「パパがまたご飯サンドイッチでいいって。本当に作る意味ないじゃん。私の時間を返してほしいわ」
毎回このことで怒ってたっけなー、まま。
そういえばタクシー代を払っていなかったっけ。私も怒られちゃうかな。
そんな考えがふと頭に浮かんだ。
なぜだろう。私は最近自分でタクシーなんて乗っていないのに。しかも、もし自分で乗ったとしても未払いで降りるなんて言語道断だ。流石にそこまで馬鹿ではない。そんな非常識なこと、やるわけない、、でもなんか、この思いが本当に強い
タクシーの未払い?
変なところで責任感発揮しなくてもいいじゃないか。
ああああぁぁぁ、もう頭が痛くなってきた。普通にシチュー食べさせてよね。
何回言っても私が白いシチューがあまり好きではないことを理解してくれないし覚えてもくれないママに対して文句を言いながら食べて、ママとちょっとした小競り合いになって最終的に笑いながら完食して、妹にも呆れた目で見られながら共犯をして、最後はみんなで渡って終わる食卓を、
返してよ。
ねぇ、なんでいなくなっちゃったの?
私をひとりにしないでよ。
愛娘でしょ?
私が一人で生きていけないことぐらいパパたちもわかっているのに、なんでこんな急に置いていくの。
ねぇ、
帰ってきてよ。
そんなことを言い切ると、母と妹は泣きながら私を見ていた。
私も、似ていながらも全く違う部屋から、顔をぐちゃぐちゃにして二人を見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます