第5話:お友達になってくれませんか?

「あの・・・唐突で驚かれると思いますけど・・」

「牧村さん・・・よかったら私とお友達になってくれませんか?」


「は?」


「ダメでしょうか?」


「あああ、いやいや・・・ダメなんてめっそうもない」

「僕なんかでいいんですか?」


(なにアホなこと言ってんの僕、絶好のチャンスが巡って来たんだろうが)


「私、少し変わってる人好きなんです」


(え?今、好きって言った?・・・言ったよね)


「ああ・・・変わってる人ですか?」


「変ですよ」

「傘、わざと忘れないよう本気で忘れるようにします・・・なんて変ですよ」


「ああ、あれですか・・・あはは、ですよね」

「じゃ〜なおさら、そんな変な男が友達でいいんですか?」


「今のところ私の身の回りで一番、知ってる?って言いかた変ですけど」

「一番話せる人が牧村くんかなって思って・・・」


「本当はね、笑って話せて遊べるお友達が欲しいんですけど・・・」


「僕、笑って話せるよう努力します」


「努力て・・・ほらやっぱり変でしょ?」

「牧村くんってイジメとかしそうにないし人畜無害って言うか人を傷つけたり

しそうにないし・・・人が良さそうじゃないですか、それで・・・」


「ああ、それが理由?・・・人畜無害って・・・人が良さそうって」


(それは違うよ仲里さん、僕も普通の男だから・・・人畜無害には

当てはまらないと思うけど・・・)


「あはは、今日はたくさん喋ったんですね」


「え〜そうですか?」

「じゃ〜たった今から私たちお友達ってことでお願いします」


「あ、それに私たちお隣同志ですし・・・・」

「私の部屋、北側のベランダのある部屋なんですよ」

「牧村さんの部屋は?」


「僕の部屋もベランダ側の部屋です」


「そうなんだ・・・だったらベランダに出てお話しできますよ」

「ほら学校だとみんなの目があるから、そんなには話せないでしょ?」


「ああそうですね・・・バス停でもバスの中でもそんなにゆっくりは

話せないですもんね」


「ね、ベランダ・・・いいと思いません?」


「はい・・・いいと思います・・・」

「それでね、せっかくでだからお互い、下の名前で呼びあいません?」

「僕は仲里さんのこと紗凪さなって呼ぶから」

「仲里さんは僕のこと愛彦よしひこって呼んでください」


「だったら不公平ないでしょ?」


「不公平って・・・ぜったい変です・・・牧村君」


「牧村君じゃなくて愛彦で・・・」


「あ、このさい敬語もなしって言うことで」


僕たちは当然、お互いのスマホの番号とLINEを交換したわけで・・・。

それにしてもなんと、一気なこの展開・・・まさかな展開。


これからベランダで仲里さんと、紗凪と話ができる。

教室じゃ、やっぱり周りの目を気にして遠慮してるところがあるけどベランダ

なら誰かに邪魔されることないよな。


僕たちにとってベランダって場所はある意味、ふたりだけの秘密じゃなくて

唯一のコミュニケーションの場になった。


つづく。

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