キンタマが片方ない男

ごり

第1話

こんにちは、クソガキ。


そう言った彼はバカちんぽだった。キンタマが片方だけなくってそれは天上に降り注ぐ星のひとかけらとなって輝いていた。


片方のキンタマとも言えるとなりの男は言った。

僕!!去年!!37歳!お子ちゃまじゃないにょ


ハート、芯の部分がガキじゃ、お前は


僕はそれを見て面白いなあと思った。それだけだった。


僕は道を歩くたびページをめくるたびに別の人になったただバイトの時のあの、勝手に体が動く、ラジコンで上位存在から操られている感覚だけは許せなかった。


僕はこの人たちには入り込むことができなかった。


おちんぽびんびん貧乏人!おちんぽびんびん貧乏人!!


最初喋り出した鶏の子供の被り物をした男が暴れた。火がついたように沸いた会場。お風呂すら沸かせそうだった。


下ネタはやめときぃやぁ!片方キンタマない癖に〜残った方もぶち殺すぞ!


お前も下ネタだよりやんけ!おい!やまびこが聞こえるぞ!耳すませ〜なんや?(張り詰めた〜弓の〜崩れるタ〜マキ〜ン)


キンタマ引っ張りすぎやろちぎれるわ!ボケ!て僕は思った。ああ面白い。こんなに面白いのに漫才やら落語やら裁判員裁判を見ずに小説を書くバカどもは明日の朝飯にでも困って、夕飯しか食えなくなってしまえとも思った。僕こそがその愛すべきバカどもの代表にでもなったつもりで2人を勝手に批評していた。


おい!にいちゃん!難しい顔してどうした?


僕に話しかけてくれているようだった。僕はつまらない人間。


いや、ね。このネタ何が面白いのか、なとじっと考えてまし、たね。


挙動不審になりながら答える。


なんや?不服か?じゃあ笑わせたる。


ケツからモヤシが7本出てきたと思おったら〜5つの豆苗でした〜!!


カンピョ〜!!


パクリやないかい!お前!あかんやろ謝れよ苦情くるやろどっかから炎上するぞ物理的にするかもなその頭の残った寂しい縮毛もガスバーナーで焼くクソボケおるかもしれんやろ!気をつけろよ!ネタの取り扱いは生物やぞ!へいらっゃい!サーモン一丁て!板前かワイはちゃうわラーメン屋や?駅前のいい立地でやらしてもろてます豚骨ラーメン一つだけ、なんか赤いタレかけてな、やってるかいなバカタレ、調理師免許すら持ってないわ。ガスバーナーで実家は全焼したけどな。ちびまる子ちゃんの花澤くん?のなんやっけ玉ねぎ頭のやつ、あいつの家、燃えるのと重なってなあだ名玉ねぎやったぞ許さんぞさくらももこ。あのころはほんま辛かったどれくらいつからったったらCoCo壱の8辛食いながらモンブランに醤油たっぷりかけて食べたときくらい辛かったかな。やったことないけどな。やってみてな。多分辛い。俺の気持ちわかるから。今だって泣きそうや今なら目からペヤング食えそうや。味すらするこれが涙の味ってやつ?いいからお前ら、謝れよ!パクリしてすいませんって二度とかんぴょう巻きと一緒にお吸い物食べませんって。謝れ!


長え。お前、おもんないな。


僕はキレそうだった。

それよりも乾いた言葉と僕から出たものに僕が1番驚いた。すっきりした。お客はひえっひえ、今なら凍った空気でかき氷が作れるな、と思った。


こいつのゆう通りや、謝ってみ。俺よりガキなお前にまともにできるわけないけど。


うびぃー!!!!誰が謝るかボケ〜!!かかってこいやコウメ太夫ヴッ!エッべッヴェボン。ほんとすいませんでした。マツコデラックスにめんじて許してください。


マツコもこう言っとるんで許したってください。


その一言は僕の地雷を踏み抜いた。月の日の夜にだけ現れる僕のフィアンセ、屠殺寸前の命の輝きを宿した目をした、現代のブッダ。ブッダというよりブッタ。今、瞬間、僕が許せなくなった。いつのまにか2人の空気に飲まれて心から楽しんでいる。僕らはトリオだった。僕は言った。


お前ら!!てっぺんとったるで!!KBS京都ォ!!


ローカルすぎるやろお前、ここ茨木やぞ。


どこやねんそれデンマークか?


なんやまた下ネタかいな。やめろ言うたよな怒るドドドドドドドドドドッドンキーコングトロピカルフリーズ。


は?


ドンキホーテとかドラえもんにしとけよそんだけド並べるならな。ド安定択やろ。


ん?静かに!シャラップッ!(唾が飛び床に水溜りができる。これは日本三大湖にできるな)


日本の有名な湖って


漫湖


ボケ


ぶち殺されてえか、性的人間!お前は下ネタばっかりィィィ!!そんなんだからキンタマなくなんねん!なしてキンタマなくなんねん!無くさんやろ普通あんな大層なポシェットに入っとるんやから。カンガルーでも無くさんぞデンマークのスウェーデンに旅行行った時くらいやろ無くすのなんて


親父が糖尿病で。キンタマが必要で。ヴェウウ。


糖尿病にキンタマは関係ないからな?お前の親父今多分キンタマ三つあるぞ。もうちょい早かったらこいつの家もそれで消火できたかもしれんのにお前は間も玉も悪いからな。


もうええわ。

なんやこれ。

おい!知らんのか終わりやって。

こんな時どんな顔したらいいかわからん?


わろたらええんちゃう。


ほんまにもうええわ。


ありがとうございましたー!!


お客さんの空気はトロピカルフリーズだったが僕は楽しかった。僕らはそれからトリオになってコンビ名もマラオブラザーズとかいったギリギリな名前から。カプーンというわかりにくい名前になった。何度か元々6人だったんですよ、のネタを使った。それで笑いが取れなくなったらまた次の生きのいいネタを探した。


3人ならいつでもくだらないことでも笑えた。きっと誰も脱退しないだろう。


僕たちはこれからもギリギリでいつも生きていく。





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キンタマが片方ない男 ごり @konitiiha0

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