第49話

ライアンの困り顔が近くなる。

「こんなことは、今までなかった。初めてなんだ」

私だって初めてです、とリトルブルーは言いそうになって必死の思いで止めた。

まつ毛がまだ雫で濡れていて、唇がきゅっと引き結ばれている。

「何と言うかその、あなたに会えない日はすごく長く感じる。だけどこうして、会えている日は」

首のあたりをかいた。

「嬉しい。嬉しいんだ、なのに、近くにいる時でさえ寂しくなる。近くにいる時の方が」

リトルブルーの喉が、ぐっと鳴る。

「あなたなら何か、知っているんじゃないかと思うんだ」

切なげに目を伏せる彼に、どうしようもないほど愛おしさがあふれてくる。

「教えてくれないか。これじゃ、戦いにも集中できない」

胸の奥がズキズキと痛んで仕方がない。どんな戦いの時よりも苦しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る