第23話

モクレンはため息をついた。茶はもうすっかりぬるくなっていたがそれを飲み干した。

「重なりすぎていて、私のことを言っているのかと思ったぐらいよ」

雨の音がする。雫が、窓に当たって丸をつくる。

「傷つくのも恥をかくのも怖いわよ。私だってそう。多分、みんなそうなんじゃないかしら」

モクレンは、愛おしそうに茶碗を撫でて、呟くように言う。

「だけれど、それを恐れていたら、大事なものを得ることはできないの」

「大事なものって」

なんですか、と聞こうとして、リトルブルーは黙る。喉の奥が熱かった。まるで、何か大きなしこりが自分の言いたいことを封じているかのようだ。

「自分の胸に聞いてみなさい」

モクレンはウィンクして、そっと言った。

「どうしたいのかはあなたの痛みが知ってるものよ」

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