(一)-9

 最後の口論をしたとき、私は元夫の頬を力一杯ひっぱたき、実家に戻った。そして、自署と結婚届に記入した日付から六ヶ月と三日経過した日付を書いた離婚届を、彼の元に郵送した。

 結婚は幸せ。そう信じている女子は多い。もちろん私もそう信じていた。しかし実際には違った。幸せなどなかった。

 夜のとばりの中で横に流れていく家々の灯りのきらめきをぼんやりとながめながら、私はそんなことを思い出していた。

 結局、ぼんやりとした結果、降りるべき駅で降りそびれてしまった。大樹の尾行を断念して私は家路につくことにした。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る