(一)-2

「水上咲良、結構ヤバいらしいのよ」

「そうなの?」

 私は口元に手を当て、テーブルの上に少し乗り出し、大樹に顔を近づけて、小声で続けた。

「どうやら、知り合いに片っ端から電話を掛けて、金をせびっているんだって」

「ふーん」

 やはり水上咲良についての反応は、鈍い。

「ふーん、ってそれだけ?」

「この歳になって昔の知人の噂話っていうのもなあ」

「嘘言いなさいよ、気になるくせに」

 大樹の本心を知りたくて、追い打ちをかける。もちろんさらに一押しする。

「だってあんた、卒業式の日に彼女に告白してフラれたんでしょう」


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る