贈られる言葉
そうざ
Advice is Given to Him
Aくんが言ってたな。
簡単なんだから心配すんな、漢字が書けなくても、九九が覚えられなくても、球を速く投げられなくても、食べるのが遅くても、うんこを漏らしてばかりでも、関係ないんだからって。
母ちゃんが言ってたな。
お前はダメな子なんだから、みんなのほうが頭がいいんだから、言うことをちゃんと聞くんだよ、そうじゃないと意地悪されちゃうよ、バカな子は可愛がってもらわなきゃ生きていけないんだからねって。
Bくんが言ってたな。
もうすぐ春だろう、春は新しい季節だろう、新しい季節は新しいことをするのにぴったりだろう、だから思い切って挑戦すべきだって。新しいことをするのは面倒臭いけど、春は大好き。大好きな季節だったら何でもできそうな気がする。
Cくんが言ってたな。
大勢の人ができてることなんだから、お前にできないはずがないって。万ってゼロが一つ、二つ、三つ、四つ……もっとだったっけ。たくさんの人ができてるんなら、ボクにもできそうな気がしてくる。
父ちゃんが言ってたな。
人の親切を無駄にするんじゃねぇぞ、お前に情けをかけるような奴は親切心が余ってんだから、しっかり食らいついて、もっともっと親切心を引っ張り出してやれって。今頃、父ちゃんはどこにいるんだろうなぁ、最近は母ちゃんもなかなか帰ってこないしなぁ。
Dくんが言ってたな。
お前はいつもボーッとしてるけど、人間はみんな悩みを抱えてるもんだ、健康とか、お金とか、勉強とか、恋愛とか、家族とか、一人前の人間になりたいんなら悩みくらい持て、思いついたら紙に書いておけって。そう言われてもなぁ、悩みなんて考えたこともないし、悩んじゃうなぁ、作文は大の苦手だしなぁ。
Eくんが言ってたな。
誰だって最初から上手にできるわけないんだから、予行練習をするといい、運動会だって予行練習をするだろ、学校の裏山に丁度いい高さの木があるから、踏み台と悩みを書いた紙を忘れずに持ってけよって。
女の子達が言ってたな。
僕のためにお花を飾ってくれるって。色んなお菓子を置いてくれるって。寄せ書きを書いてくれるって。ボクってモテるのかなぁ。
先生が言ってたな。
君はいつもみんなに囲まれて人気者なんだなぁ、君が転校してきた時は何かと心配したけれど、君のお陰でクラスがまとまった気がするよ、学生時代の友達は一生の宝物だから助言はよく聞けよって。
みんなが色んなことを教えてくれたなぁ。
ボクはほんとに恵まれてたんだなぁ。
この紐で大丈夫かなぁ。
贈られる言葉 そうざ @so-za
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