第37話 私が目になります
「これさ、あの
「どういうこと?」
「だからさ、
「つまり、
「お前、俺の呼び方いい加減統一しない?」
「正直自分でも混乱してる」
にへらっと困ったように笑ってそういう
「お兄ちゃんでいいよずっとそれだったろ」
「………………それはやめとく」
まったく、この妹の考えていることはなにひとつわからん。
と、そこに
[先輩、こんちわです。あの、来週からの土曜日なんですけど、マルちゃんと一緒にまた買い物に付き合ってくれませんか? マルちゃんにもそう言っておいてください]
そう、
だから、学校が終わると
「
「あー、靴買いたいとかいってたなー」
と、そこに
[あとマルちゃん髪少し切って染めてるんですけど、ちゃんと褒めたっすよね? 気になったんで一応]
あ。
忘れてた。
確かに、こないだの土曜日に
髪を切ったかどうかは……まあ切ったんじゃないか、そこまで細かくは見ていない。
いまさらだけどなんか言った方がいいのか?
「……ん? なに? 人の顔じっと見て?」
「うん、その髪の色、
「はっ? うざっ!」
「おい、先輩にその口の利き方はいいのか?」
自分で始めた設定を忘れるんじゃない。
「ウワー。センパイニホメテモラエテウレシーナー」
あーもう憎たらしいときはほんと憎たらしい妹だ。
「ふん、どうせ今小南江ちゃんにいわれて褒めただけでしょ」
そう言って顔をそむけた
★
とりあえず、しばらく配信はしないことにした。
ストーカーか何か知らないが、とにかく刺激はしないようにしたい。
武士郎にしてみても、自分一人の問題だったらなんとでも動けるのだが、今回は
おとなしくしているのが一番よさそうだった。
学内でも学外でも、
放課後、武士郎のクラスの教室に来た
「女子二人だけだと、万が一成人男性複数に襲われるとアウトだからさ、できる限りいつも群れの中にいろよな」
「群れって……」
呆れたような顔の
「了解す。じゃあ私が目になります」
「そうだ、みんなで集まって大きな魚のフリをするんだぞ!」
「はいっす!」
馬鹿じゃないの、と
とそこに、クラスメートの男子が声をかけてきた。
生徒会で庶務をやっている地味な生徒だ。
「おい、山本、なんか
彼女って、
「話ってなんだ?」
「ほら、例の、こないだの、サッカー部の寮の……。お前がぶっ飛ばしたうちの一人、
「サッカー部の寮か……。あったな、そんなことも……」
今やストーカーやら身バレが気になって、あの事件のことなんかもうほとんど忘れかけていた。
が、まあわざわざ生徒会長が謝ってくれるというならいちいちそれを断るのもおかしいだろう。
生徒会長か、武士郎も顔だけは知っている、成績は学年一位、スポーツ万能でイケメン……というより、アイドルみたいにかわいらしい顔をしていて目立つ生徒だった。
「まあ、じゃあ生徒会室よっていくか、
武士郎がそう言うと小南江は渋い顔をして言った。
「生徒会すか……私、生徒会に苦手な人がいるんでやめときます。二人で行ってきてください」
すると
「私もあの時のこと、いまさらどうこう言われるのも……。なにより、あんまり噂にしないでほしいな……。山本先輩、一人で行ってきてください。私と小南江ちゃんは自分のクラスで待ってますから。私は別に、生徒会どうこう思ってないって言っといてください」
そうだな、
こういうめんどくさいことを引き受けるのも兄の仕事だよな、と武士郎は思った。
「わかった、じゃあお前らは自分の教室戻って待っててくれ、俺はちょっといってくるぞ」
だが、生徒会室で武士郎を待ち受けていたのは、生徒会による謝罪だけではなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます