第9話 Flash
パチパチと飛ぶ羽虫が蛍光灯にぶつかる。揺らめいた光は蛍光灯が切れかけていることを合図している。蛍光灯に当たる羽虫はショックを与えられるように瞬間的に固まって下に落ちそうになる。また羽ばたいて羽虫が蛍光灯に当たっていく。暑さにやられて何度もあたって少しずつ弱っていく。私と蛍光灯の関係も同じように思えた。
蛍光灯は私に夢を与える。夢にはたくさんの役割がある。私にとってはフラッシュバック、過去を思い出すそれになのだ。どこであっても、私が蛍光灯を見て瞬くそれが私の夢の始まりなのである。
私の部屋には電気が切れかけている蛍光灯の電気がある。その電気を変えようと思っているのだけど私はとても面倒くさがりで、いまだに替えの蛍光灯を買えずにいる。わたしは見つめると嫌なことを思い出すのをわかっているのに、怖いもの見たさで上をぼんやりと見てしまう。
「ああ、夢はどうしていいものばかりでないのだろうか」
独り言は大きくて、瞬いた蛍光灯に引きずり込まれるように私は夢へと誘われていく。
あの日、とても綺麗な青空で、横断歩道をわたろうとしていた。いつもの夢の光景だ。この後のことはいつも見るたびに夢が覚める。どうしてなのか分からなくて、頭を抱えるばかりだった。
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