第4話 月の話2

今日はお母さんの言いつけを破る日。

 何が間違いかなんて私はわからないんだけど、何かを得たい。その気持ちばかり先走っている。

 私はスーパーでも縮小されている中で、桃を一つ買った。お母さんに見られないように洗って、下手な言い訳をして公園に来ている。

 正直ドキドキしている。

 誰も止めていないけど、悪いことだと言われている桃を食べること。

 食べたらどうなってしまうんだろう。

 皮はナイフもないので剥けないが、よく洗ったから大丈夫だろう。なんだかいつもの桃より美味しそうで、私はゆっくりと口に運ぶ。

「甘い」

 ゆっくりと食べ進めていく。甘くて、手に汁が垂れる。私は気にせず食べていく。恐ろしさなんてどこかに消えてしまっていて、そのまま食べていく。

「……なんだ、大丈夫じゃん」

 私は周りを見渡す。すると、周りではなく、体が異変を感じた。

 体の中に何かを感じる。

「……苦しい」

 桃しか食べていないのにお腹が張っているのを感じる。

 桃は卵子みたいだ。

 急激にくる体の異変に蹲っていると、大きな影だ。私はその瞬間悟った。これは供物の選定なのだと。いらない人間は月の神様に連れて行かれるのだと。

「……どこに連れていくんですか」

 月の神様は喋れない。ハンペンのような見た目をした神様。

 私は心から嫌いだった。

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