12/24(side:B)-前半
「お〜い夢希ぃ、真央ちゃんと遊びに行くん?」
玄関で靴を履いていると突然ちさ姉が肩を組んできた。
平常時とのテンションの差と◯トゼロの缶を持っているところから見て、どうやらこんな時間(十六時半ぐらい)からもうすでに酒を飲んでいるようだ。
「いやまぁ……友達とね……」
「へぇ、いいねぇ……。うぅ、わだじはこどじはクリぼっぢだぁ……うぅ……ふこうへぇだぁ……!」
ニヤけながらいじってきたかと思ったら今度はいきなりぐずり始める。
(げ……めんどくせぇ……こりゃ振られるわけだわ)
「(今年はクリぼっち)じゃなくて(今年もクリぼっち)だろ?じゃあ俺急いでるから」
無理矢理立ち上がろうとすると今度は全力で体重をかけて阻止してきた。
「うわーん!花しゃん、夢希が構ってくれないよー!」
(構ってくれないって、子供かよ……)
その歳になってまで大人(叔母)に甘えるのは流石にドン引きしたくなる。
数秒もしないうちに母さんがリビングからこちらへやってきたのだが、顔に書いてあるる。どうやら母さんも俺と真央のことの方に関心が向いているようだ。
「夢ちゃん、さっき
(えぇ……真央のやつ結奈さんに話したのかよ……)
俺たちの両親はいつも何かと俺らの関係を気にしてくる。色々助けてくれる時もあるが、大概がありがた迷惑の範疇で片付いてしまうようなものだ。
「おう……九時前には帰る」
「きゃー聞いた千紗ちゃん、ご馳走作らないとね!」
ちさ姉をひっぺがしてくれた事には感謝する事にしておく。でも、なんでここまで浮かれていられるのだろう?別に俺の告白がうまく行くとは限らないのに。
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誘った張本人である俺が遅れていくのは流石に申し訳ないと思ったので、集合時間の一時間前、すなわち十七時ぐらいに到着するぐらいに時間を見積もって出発した。いつも遅刻しがちな俺だから今日ぐらいは真央を驚かせようと思った。
けど……。
(え……あれ真央じゃね……?)
校門前に到着するとそこには体操座りのような体制で柱に寄りかかっている真央がいた。一時間早来たと言う事は先約があったのだろうか?一瞬戸惑ったが、声をかけてみる事にした。
「あれ……真央……?」
反応がない。寝ているのだろうか?
「え……おい、真央……だよな……?」
ようやく真央が顔を上げた。いつもの落ち着いた表情とは違う、困惑しているような表情。
「なんで……まだ一時間あるのに……」
(流石にびっくりするよな……そりゃ)
真央は何か先約があってそこから直接来たのかもしれないが、俺にはそんなものはない。
「いや……まぁ……気まぐれだよ。お、かわいいな真央、メイクしてんのか。それにそのトレンチコート、似合ってる」
昨日健に教えてもらった。女子は服装を褒めると嬉しいらしい。
(でも今気づいたけどさ、これ俺が言うとキモいとか無いよな……あぁ、胃が痛い)
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ともかく商店街の方に歩いていく事にしたのだが、どこであの話を切り出すか悩んでいた。
(今しか……ないか……)
一度立ち止まって深く深呼吸をした。
「「あのさ……」」
どうやら真央も何かを言おうとしていたようだ。気まずい。
「え……」
「あ……」
「お前から言えよ」
「真央が先に言いなって」
いつもと変わらないやり取りができた事の安堵か思わず吹き出してしまった。正直、ここ数日避けられていたのでしっかり話せただけでも死ぬほど嬉しい。
「夢希……」
名前で呼ばれたのなんていつぶりだろうか?いつも「おい」とか「お前」だったはずだ。
心音がうるさくなっていくのを感じながらも、ここは冷静に。
「ん?」
「私は……。私は、お前の事が好きだ!」
突然の告白に硬直する。
(真央は……俺の事が好き……?)
一瞬嘘告白を疑ったが、真央はそんなくだらない事をする人間ではない。
(と言う事は……)
気がついたらつぶやいていた。
「俺も……きだ」
「俺も好きだ」と言うつもりだったのに、声が
「なんて?はっきりと言葉にしてくれないと分からないなぁ……」
ちょっと意地悪っぽく真央は笑う。
(いつもの仕返しのつもりか?ならこっちにも考えがある)
「俺も真央が好きだ!!」
響くような大声で気持ちをぶつけた。本当は言葉では言い表せないぐらい好きだが、今はとりあえずこれでいい。
「はぁ……。お前、そんな大きな声出して恥ずかしくないのか?」
どうやらまた真央の方が一枚上手だったようだ。
「いや、今のはお前がそう言わせた……」
「へぇ……。そっか、じゃあ本当は私の事、そう思ってくれていないのか……」
真央はわざとらしく悲しそうな顔をする。
(コイツ……!)
「お前なぁ……日頃から俺にダル絡みしてくるなって言って来てた癖に自分がやってどうすんだ」
「……好きな人にダル絡みしちゃ……駄目か?」
(いや、そんな上目遣いで言わないでくれよ……何この子かわいい)
「別に……駄目じゃない……けど。俺もずっとしちゃってたワケだし……」
少し照れ臭い。いや、少しどころでなく照れ臭い。
すると真央が急に胸に飛び込んで来た。
「えっ、ちょっとおい……!」
少し抗議したが真央は一切気にしていないようだ。
それどころか少しずつ抱きしめる強さが強くなってきている。
「……大好き」
不意打ちを受けすぎた。もうやめて!とっくに俺のライフはゼロよ!
でも、修正させて欲しい。
「俺の方が好きだし」
すかさず真央は反応した。
「お前よりも私の方がお前が好きだ!」
お互い笑ってしまった。
(言うなら今しかない、か……さっきは先を越されちまったからな)
「……なぁ、真央。俺はお前に釣り合わないと思う。それでも、俺と付き合ってくれますか……?」
多分、今ので俺は一生の度胸の半分を使った。
何度も言うようだが、俺みたいな奴がこんな魅力的な子に釣り合うはずがない。
(それでも……俺を選んで欲しい)
ようやく本音が言えた。
「付き合うに決まってるだろ!それに釣り合わないとかそんなこと言うな、バカ!」
真央はそう叫ぶと再び胸にの胸に顔を埋めた。
嬉しさのあまり、真央を強く抱きしめずにはいられなかった。
言い切れる。俺は今、世界一幸せだ。
***
明日の投稿で今年投稿予定分(本編)は最後です!
最後までどうかご付き合いください。
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