第14話



 「いらっしゃいませ〜」



 チリンチリンという入り口の呼び鈴が鳴る。


 18時を境に客足も多くなってきていた。


 ヒロは鈴が鳴るたびに、サングラス越しに目を尖らせてた。


 ふと、へんな挙動を見せたんだ。


 毎度の如く軽快な声が、店内に響き渡ったあとに。


 


 げっ!!!!!


 おいおい、まじか!


 まじで来た!!


 店員さんの声につられて入口に目を向けると、スーツ姿の飛鳥先生がそこに立っていた。


 思わず水を吹き出しそうになってしまった。


 待ち構えてたとはいえ、まさか本当に登場するとは思わなかった。


 慌てて身を隠した。


 


 「ね、だから言ったでしょ?」


 「シッ!声が大きい」



 何余裕ぶっこいてんだよ。


 ね?じゃなくて、もう少し慎重になれ。


 今のままじゃ絶対バレるって…



 「普通に身を隠しとけばよくね?」


 「普通にって?」


 「とりあえずこっち来い。そっち座ってたら視覚に入る」


 「大丈夫だよ」


 「お前の顔が見えるだろ」


 「変装してるから大丈夫だって」



 その変装がダメなんだっつーの!


 ちょび髭外せよ。


 目についてしょうがないんだが…



 「自然体の方がいいって。この前は変装なんてしてなかったんだろ?」


 「そうだよ?」





 座敷の奥に身を潜めて、先生がラーメンを食べ終わるのを待った。


 30分も経たなかった。


 お店に入ってきて、出ていくまでの時間は。

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