第10話


 「1人で?」


 「そう!しかもここ最近ずっと」



 あんな所に1人で…


 帰り道とは別の方向だから、あそこらへんはあんまり立ち寄らない。


 ただ、時々車で通った時に廃病院は目にしてた。


 あそこは「危険だ」って知ってる。


 幽霊ってのはどこにでも現れるもんだが、現れやすい場所とそうじゃない場所がある。


 条件はその時によって様々だが、基本的にはいくつかの特徴があるんだ。


 廃病院なんてのは幽霊にとってのテーマパークみたいなもんだ。


 人がショッピングモールに集まるように、あそこにはたくさんの幽霊がいる。


 実際に見たわけじゃない。


 でも、なんとなくわかるんだ。


 あそこには“いる”って。



 「いらっしゃいませ〜」



 ラーメン屋について、俺たちは奥の座席に座った。


 引き戸があって、身を隠すにはちょうどよかった。


 先生が来てもうまく隠れられる。


 サングラスにちょび髭をつけたヒロが、ジャージのフードを頭に被せながら小声でそう話してきた。



 「どこで用意してきたんだそれ…」


 「100均」


 「そんなもん売ってんのか」


 「そうだ、マスクもしなきゃ」


 「さすがにやりすぎじゃね?」


 「念には念を、ね?」



 逆に目立ってるんだけど??


 俺にも同じような小道具を渡してきたが、変人だと思われるのもやだから遠慮した。


 とりあえず制服だけ脱いだ。


 上着だけ。

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