第9話


 ◇




 「で、どこに行くんだよ?」


 「ラーメン屋!」


 「ラーメン屋ぁ!?」



 何言ってんだ?


 ラーメン??


 …まさか、食うとか言い出さないよな?


 俺今日手持ちがないんだけど


 ってか、そもそもお腹空いてないし



 「行く前に変装しなきゃね」


 「変…装…?」


 「先生に見つかっちゃうとまずいからさ?」




 おいおい


 一体なんの話をしてるんだ?


 ラーメン屋に、先生


 全く見えてこないんだけど…


 おちょくってないよな?


 まさかとは思うが



 「これは噂なんだけど…」


 「おう」


 「飛鳥先生は最近毎日ラーメン屋に行ってるらしいんだよね。同じとこの」


 「ふむ」


 「で、その帰りに1人で廃病院の中に入って行ってるんだって」


 「廃病院??」


 「ほら、あそこ。リサイクルセンターの横の」




 リサイクルセンターの横。


 そう聞いてすぐにピンときた。


 あそこだろ?


 大通りを渡ってすぐのところの。


 改装されたばっかのパチンコ屋と、潰れかけのドラックストア。


 「廃病院」っていうのは、この街じゃあそこしかなかった。


 リサイクルセンターの工場の煙突が目印だった。


 モクモクと立ち上る煙突からの煙が、河川敷の空の下に広がっている。


 昔はボウリング場があったんだよな。


 橋を渡った先の、道沿いに。

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