第19話 ロリショタ専門家による白峰ましろ偽ロリ説
「いや……ここは師として『さすがはサラマンダー本体と直接契約を交わしてのけた精霊術師だ! 有象無象の召喚師とは一味違うな!』と褒めてやるべき場面なのか……!?」
「あのさ……ちょっといったん、鏑木くんの話は脇に置いといてもらっていい?」
委員長が手真似をしながら、遠慮がちに言った。
「というか精霊術師と召喚師って違うの?」
「本体と直接契約するのが精霊術師、分霊と契約するのが召喚師……じゃったかの?」
ましろが首をかしげながら説明する。
「その認識で合ってるよ。ただ、召喚師のほうも分霊なのに本体って呼称する慣例があるから、めっちゃややこしいんだけどさ」
俺は目をすがめて答える。
「え? どういうこと?」
「分霊……つまり分け
俺は人差し指を立てる。
「でも召喚師と召喚対象の実力差によっては、弱体化させないとまともに召喚できない……ってパターンもあるわけだ。で、霊力はもちろんのこと、思考力や会話とかの機能も全部なくした簡易版というか、本来なら『使い魔』とでも称すべき分霊をわざわざ作って召喚できるようにすることがあるわけだ」
委員長が怪訝な顔をする。
「それなら『分霊』と『使い魔』って呼び分けたらいいんじゃないの?」
「普通はな。でも相手によってはまずいんだよ。たとえば契約対象が神そのものだったり、あるいは信仰を失ったけどかつては神と呼ばれた存在だったりとかな」
俺は苦笑する。
「弱体化させた分け御霊とはいえ、そういう崇高な存在を『使い魔』呼ばわりはさすがにまずいだろう? 不敬すぎるってんで……だからまぁ間違った使い方なんだが、本来の意味での分け御霊を『本体』と呼んで、弱体化させたほうを『分霊』と呼び分けるようになったのさ」
あと、と俺は翔太とサラマンダーを見る。
「ぶっちゃけ精霊術師がマイナーってのもある。分け御霊ではなく精霊本体と直接契約を結べるやつって少数派なんだよ。メジャーな召喚師側が『本体』『分霊』呼びしてるせいで、そっちが定着しちまったというか……」
「誤用が正しい言葉として辞書に載ってしまったようなものなのじゃな」
ましろはしっぽをゆらゆらと揺らしながら答える。
「平たく言っちゃえばそういうことだなー」
俺はましろの頭を撫でながら言った――ましろは上機嫌な顔で目を閉じる。かわいい。
「もう私、いちいちふたりのイチャイチャにツッコミ入れないけど」
委員長が俺たちを見ながら呆れ顔で口を開く。
「とにかくこのサラマンダーちゃんは本体で、分霊じゃないってこと?」
そうですよ、と翔太が答えた。
「ここにいるサラマンダーは本体で、僕と直接契約してます。僕の力が増すことで、彼女の霊力も上がっていく形ですね。通常よりも早く成長できるのがメリットです」
「まっていてください、ショータさん。すぐにマスタークラス、そしてプレジデントクラスまでいって、おとなの女性になってみせますから!」
サラマンダーは笑みをたたえる。
「そうしたら、およめさんです!」
「ちょっとまってまって! だからふたりってそういう関係なの!? 私の入る余地は!?」
ナチュラルに女子高生が男子小学生にモーションをかける気でいる……。
「うーん……さっきもいったように、わたしはショータさんが複数の女性をはべらせてもよいとおもっています。というよりハーレムをつくっちゃおうとおもっています。もちろん、正妻はわたしですが」
サラマンダーは最後の言葉に力を込めた。
「でも、あなたはヘンタイさんっぽいので、ちょっとどうかとおもってしまいます」
「いや変態じゃないよ! めっちゃ失礼な子供!」
「こ、こどもとはなんですか! たしかにまだこどもですけど……! でも、すぐにおとなのレディに……!」
「まぁ委員長はいわゆるショタコンのようじゃからのう」
ましろがほんわかした調子で言った。
「旦那さまの見た目を酷評した理由も、今ならわかるのじゃ。確かに大人の旦那さまは委員長の守備範囲を大きく逸脱しておるのじゃ」
「いや私は結構、客観的な評価を下したつもりなんだけど……!? ましろちゃん――というか退魔師? には鏑木くんがどう見えてるの……? 崇拝の対象ってなに?」
委員長は頭を抱える。ましろはサラマンダーに目を向けた。
「とはいえサラマンダーよ。ショタコンだからといって、さすがに変態呼ばわりはちょっとひどいのではないか?」
「そうでしょうか?」
「うむ。手前味噌になってしまうが、わしもロリ爆乳な美少女じゃからな! すなわち旦那さまもまたロリコン……! 変態ということになってしまうのじゃ!」
え!? そうなの!? と思ったが――言われてみれば、ロリコンに該当するのか?
いや待て、俺はロリだからましろに惹かれているわけではない。しかし……世間一般的な認識だと、やはり俺はロリコン扱いされ――
「は? 何いってんの? ましろちゃんはロリじゃないでしょ?」
俺の内心の葛藤をあざ笑うかのように委員長は断言した。
ましろも一瞬、何を言われたのか理解できなかったらしく、ん? という顔で固まった。
「ましろちゃんロリじゃないよ」
普通に追い打ちしてきた委員長! ましろは、なっ――! と口を大きく開ける。
「かばい立てしたのになんで撃たれてるんじゃ!? いや、というかちょっと待つのじゃ、さすがに聞き捨てならんぞ!? わしのどこがロリじゃないんじゃ!? 立派なロリ爆乳じゃろうが!」
「爆乳なのは事実だけど、別にロリじゃないでしょ!? 何いってんの!?」
まったく退く気配を見せない委員長。
「逆に自分のどこを見てロリだと思ったの? ありえなくない?」
「あ、ありえないと言われるほど!? いやいや、よーく見るのじゃ!」
ましろは自分の顔を指差す。
「童顔かわいい系の顔立ちじゃろ!? おまけにほれ! 背も低くって――!」
ハァー……と委員長は盛大にため息をつく。まるで、これだから素人は……と言わんばかりの――
「これだから素人は……」
実際に口に出して言ってるこの人……。
「いい? ロリっていうのはね、子供って意味なの。わかる? ロリって名乗る以上、体つきもちゃんと子供でないといけない! そうじゃなきゃぁ私はロリと認めないわけ!」
委員長はロリのなんなんだろう……専門家?
「た、体型じゃと……!? つまり爆乳な時点でロリじゃないとか、そういう――」
「違うっつーの!」
委員長は自分の髪をがしがし手で引っかき回す。
なぜ自分の高邁な思想を理解できないのか、一般人の相手はうんざりだ……! と全身で主張しているかのようだ。
「スタイルとかプロポーションとかの意味でだよ! ましろちゃんさぁ!」
委員長はビシッとましろを指差す。
「スタイルよすぎなんだよね! 小顔だし、手足も伸びてるし、そもそも単に胸がデカいだけじゃなくて、出るとこ出てて引っ込むとこ引っ込んでるじゃん! メリハリありすぎるの、あまりにも!」
「め、めりはり……?」
「そう! メリハリ! ロリっていうならさぁ! もっと寸胴体型でしょうが! ほんで頭も大きくて手足が短めで――要はいかにも子供! って体格じゃないといけないわけよ、わかる!? ロリ爆乳って言ったらさ……明らかに子供みたいな体つきで、でも不自然に胸だけが大きくふくらんでて――ってのが王道でしょうがァ!」
魂が絶叫するかのような演説だった。
「なのに――なんだお前ェ! その明らかに成熟した大人の女の体つきはァ! そんなんでロリ名乗れると思ってんの!? そもそもスタイルよすぎて全ッ然小柄に見えないんだよねェ! 鏑木くんと並ぶとさ、え? こんなに背ぇ低かったの? ってちょっとびっくりするくらい抜群のプロポーションしてるのがさァ! 完全に反則! ほら、見なさい!」
委員長はスマホでましろの姿を撮影し、その画像を見せた。ましろの立ち姿が写っている、足先から頭の先までの。
「この対比物なしの画像だけ見せてさ、『実はこのコ、すっごい小柄で一四五センチくらいしかないんだよー!』とか初見で見抜けるやつ絶対いないからァ! 断言するけど、百パー『えー! すっご! モデルさん? 一七〇はあるよね?』ってなるから! そんなん絶対ロリじゃないんだわァ!」
委員長の言葉に、ましろは顔を青ざめさせる。
「そ、そんな……! ロリ爆乳からロリとったらただの爆乳ではないか! わ、わしの貴重な属性がぁ……!」
ましろは涙目でうなだれた。委員長は呆れ顔である。
「いや属性だけでいったら多すぎでしょ? 爆乳で小柄で童顔で、しかもケモミミしっぽに『のじゃ』口調、なんか露出だらけのエロい巫女服着てるし、言っちゃあなんだけどゲームとかアニメとかの世界からそのまま来ましたみたいな――」
そこまで言ってから、委員長はもう一度まじまじとましろを見て、
「っていうか、あらためて見るとホントすごい服着てるね!? これ自分のスタイルに絶対の自信がないと着られないやつ! 胸だけじゃなくて腰回りスラッとしててお尻がデカくて太ももが肉感的で……! 自分の体がめっちゃエロかわいいって思ってないと着用不能な衣装じゃん! これ堂々と着られる時点でロリじゃないよ!」
「ぬぐぅ……! し、しかし旦那さまがロリだと思ってくれればそれでいいんじゃ! わしは別に! 他人に美少女だと思われないわけではないのじゃ! 旦那さまが美しいと、ロリ爆乳だと認識してくれたらそれでいいんじゃー!」
のう旦那さま!? とましろが俺を見た。
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