第4話 合宿3日目
「う~ん・・・」
あ~、寝たら体が痛いな。とりあえず部屋をでてロビーに行こう。
「おはよう優輝。優輝にしては早いじゃん。」
え、そう?
「今何時?」
「六時半です~!」
おお、ほんとだ、久し振りに目覚まし時計なしでこんな時間に起きた。
「よし、男子たちも起こすか。優輝、園香、行こう。」
「「はーい。」」
トントン、トントン
「男子達、どの部屋も出てこないね。」
「う~ん。まだちょっと眠い。」
「我慢してください~。」
トントン ガチャ
「なんだ?こんな時間に女子が揃って。」
「起床時間だから起こしに来たのよ。さあ、飯島くん。他の二人を起こしてきて。」
「ああ。」
あ、戻ってきた。でも、治人と悠しかいないぞ?
「あれ、透はどうしたんだ?」
「いや、透の部屋をノックしても出てこなくてな・・・悪いが一緒に来てくれるか?」
「わかった。楓、園香、行こう。」
「わかったわ。」
「は~い。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コンコンコン
「亀島くん?いる?楓です。起きてる?起きてるなら出てきて。」
「出てこないな。まだ寝てるのかな?」
「そうかもですね~。とりあえず~、中に入ってみればいいのでは~?」
「それもそうだな。ここの鍵を持ってる人はいないか?」
「ここの鍵?たしか、優輝が持っていたんじゃ?」
「いや、僕も持っているが、一年生の部員のスペアキーを持っているのは園香もだな。」
「そうですね~。」
「今僕はスペアキーを部屋に置いてきちゃって・・・園香、今ってスペアキー持ってるか?」
「はい~。」
「よかった。貸してくれるか?」
「はい~。どうぞ~。」
ガチャ
「透くん~、大丈・・・」
「優輝、どうしたn・・キャー!」
「透!?大丈夫か!?」
「あ・・・・」
「園香、携帯電話は持っているか?」
「も、持ってます~!」
「じゃあ警察に連絡しろ!」
「はい~!あれ?」
「どうしたんだ、園香?」
「ここ・・・スマホが圏外です~!」
「じゃあちょっとホテルの人を呼んできてくれ!」
「私、こ、腰を抜かしてしまって~・・」
「わかった。じゃあ楓、いってきてくれ。」
「わかった!」
ああ・・透・・どうしてこんなことになってしまったんだ・・
「呼んできた!」
さすがは楓、行動が早いな。
「ホテルの人に事情も説明して警察と救急車を呼んでもらおうとしたんだけど・・」
「ありがとう。それで、警察はどれくらいで着く?」
「それが・・ここって本当に山奥で麓まで出ないと携帯が使えなくて・・・」
「それで?」
「昨日のうちに土砂崩れが起きちゃったみたいで電話できなかったの。」
「え!?それでいつくらいに土砂崩れの処理ができそうなんだ?」
「そこが問題なんだけどね・・・二週間以上かかるらしいの。結構大規模な土砂崩れだったみたいで。」
二週間!?それって・・・
「それまで僕らも帰れないってこと?」
「う、うん。そうなるね。」
え・・・最悪。
ああ、早く警察が来ないかな。
「どうして・・・どうしてなんだ・・・透・・・」
治人が泣いている。確かに親友が死んだんなんだから当然のことか。
「透・・・」
悠もか。やっぱり親友の死は悲しいよな。
「透くん~、なんでこんなことに~・・・」
園香も悲しいよな。同じ学年のなかいい子が死んで。
「透、なんでなんだよ・・・透・・・」
僕だって悲しいさ。でも、僕以上に悲しんでいる人を見ると、冷静になってしまう。それが、人の性ってものなんだろう。
ああ・・・でもやっぱり悲しいな。
親友が死んじゃったんだから。
「皆、透が死んでしまって悲しいと思うが、ひとまず部屋に戻ろう。園香、立てるか?」
「む、無理です~・・・」
「じゃあ私がおんぶしていこう。」
「ありがとうございます~、優輝先輩~。」
「いや、いいんだ。」
「治人、悠、大丈夫か?」
「ああ・・・大丈夫だ。」
「・・・大丈夫です。」
「じゃあ行こうか。」
「はい~。」
「・・・ああ。」
「・・わかり・・ました。」
ーーー 部屋に着いた・・・か。よし、警察が来るまでは透は透の部屋に現状維持しておこう。あの血だまりの量は尋常じゃないしな。でも、二週間後となると、今は夏だし透の遺体が腐敗してまうかも。
「よし、じゃあ一旦解散しよう!これからどうするかは皆で話し合って決めるから、今はとりあえず部屋にもどってゆっくりしていてくれ。僕は少し残る。」
「わかった。」
ああ・・・大変なことになっちゃったな・・・これからどうなるんだろ?なんかすごく疲れた気がする...
ーーー
「みんないるか?」
「はい~、五人全員います~。」
「じゃあ、とりあえずは今後の予定を決めよう。」
「そうね、優輝。早めに決めないと。」
「はい~。」
「・・・はい。」
「・・・ああ。」
「・・といってもこの宿から出れないし・・どうしよう・・・」
「警察に電話してもここにこられないし・・・」
うーん、本当にどうしようもなくなってきたな。・・・・あ。
「な、なあ、楓。」
「うん?」
「僕たちミステリーサークルなんだしさ、誰が犯人か推理できるんじゃない?」
「あ、それいい考えかも!でも、容疑者はこの宿にいる全員だよ?どうするの?」
「いや・・・あの量の刺し傷は強盗や金目当てではないだろう。僕たち大学生だからそこまでお金持ってないし。だから・・・たぶん怨恨の線が強いんだ。」
「え・・・それって・・・」
「ああ、僕たち5人のなかの誰かの可能性が高い。」
「こ・・・怖いです~・・・」
「園香、大丈夫、誰かを突き止めよう。」
「・・・はい~。」
この中にいるのは間違いない。なんとかしないと。
「とりあえず、一人ずつ昨日から今日の朝までのアリバイを聞いていこうか。」
「そうね、優輝。まずはあなたからでいいかしら、飯島くん?」
「ああ、わかった。」
「まずは俺か。俺は朝は7時まで寝ていたな。その時間まではみんなも寝てたんじゃないか?」
「・・・ええ、確かに飯島くんの言うとおりね・・・」
「そのあとサークル活動があってそれが18時に終わった。そうだよな?」
「ええ。そうよ。」
「そのあとは身支度をしてすぐに寝た。」
僕も寝てたんだよな・・・だから誰もアリバイがないし・・・でもこの時間帯に殺されたんだろうし・・・あれ?でも、昨日サークル活動なんであったっけ?
「でも、その間のアリバイはない。一人部屋だからな。だから、全員に聞いても意味がないと思うぞ。全員アリバイがないんだからな。」
「でも、一応聞いていった方がいいと思うわ。矛盾がある人がいるかもしれないから。」
「ああ、僕もそう思うよ。」
「次は私ですね~?」
「ああ、園香にお願いしていいか?」
「はい~!わたしののアリバイは~・・・」
「まず朝起きたら、すぐに顔を洗って~、サークル活動して~、そのあとは・・・」
「・・・どうしたんだ?園香。」
「・・そのあとは~、ずっと部屋にいました~」
あ、やっぱりか。でもなんでだろう?なんか不自然だったような・・・
「ありがとう、園香ちゃん。じゃあ次は私かしら?」
「ああ、楓。頼む。」
「サークル活動の前まではみんなと一緒よ。私はサークル活動のあと1時間くらい本を読んでいたけど・・・」
あ、その本もしかして!僕が昨日の夜に読んでたミステリー小説!?
「そのあとはやはりみんなと同じく身支度してすぐ寝たわ。」
「あ、ああ。わかった。ありがとう。」
「最後は悠だな?」
「ああ・・・僕はきのう、皆さんと同じく七時くらいに起きて、サークル活動があって、みんなでご飯を食べて・・・そのあとは、眠くなってずっと寝てました。」
「そう。ありがとう、尾沢くん。」
「ああ、わかった。皆ありがとう。」
「そういえば・・優輝はなにをしていたの?」
「え、僕?宿に来て・・・すぐ寝て・・・6時半におきたよ。」
「あれ~?優輝せんぱ~い、それは一昨日の話ですよね~?きのうは~?」
え、どういうこと?今日って二日目じゃないの?
「え、楓、今日って二日目じゃないのか?」
「いや・・・今日は三日目よ。」
え!?じゃあ僕一日ずっと寝てたってこと?だから起きたときやけに体が痛かったのか・・・
「じゃあ・・僕はたぶん一日ず~っと寝てたことになる・・・。」
「ええ!?本当?」
「・・・うん、ごめん。」
「なるほどね。優輝は寝るのが大好きだから平気でそんなことしそう。」
「確かにそうかもな。」
「そうですね~。」
あ、僕ってすごい恥ずかしいことしたんじゃ・・・いや、恥ずかしがるのはあとだ! 今は少しでも事件解決に役立てるようにしないと!
「優輝先輩~?どうしたんですか~?」
「あ、ごめん。なんでもないよ!」
よし、これから推理を始めよう!
「まずは、状況整理から始めよう。」
「ああ、そうしよう。」
「じゃあまずは透の死因から考えたらどうかしら?」
「いや。それは外傷がたくさんあり、流血も多いことからもちろん刺殺だったと思われる。あと、補足しておくが、致命傷は喉元だ。また、スタンガンを使われた跡が透の首に残っていた。そして、ナイフは包丁ではない。もうちょっと小さい果物ナイフかサバイバルナイフだな。刺し傷が小さく、喉元を切ったと思われる。」
「一体~、誰が~、こんなこと~、したんですか~?」
「そうだな・・・」
「そうね。今一番怪しいのは飯島くんだけど・・・」
え・・・そうなのか?
「・・・確かにそうですね・・・」
そんな・・・。悠や治人、園香、楓の誰かが犯人だなんて思いたくない・・・でも本当にそうだったらどうすれば・・・!
「・・・違うぞ。」
治人が一言だけ発する。
「え?違うってどういうことよ?飯島くん?」
「ああ、違うぞ。俺は犯人じゃない。」
「・・・じゃあ・・・亀島くんをこんな風にしたのは一体誰なのよ!」
あ、楓が声を荒らげた。こんな楓は珍しいな。
「楓、落ち着け。治人が犯人だって決まった訳じゃない。さらにそうやって名指ししても確固たる証拠がなければ誰も認めないよ。」
「・・ごめん。」
でもこれはあたりまえだろう。だって同じサークルの部員が死んだんだから。このサークルはみんな親友のように思っていただろうし・・・きっと他の人も顔にはださないだけで、すごく悲しいんだろうな・・・あ、なんか涙が出てきた・・・。
「おい、優輝、どうした?」
治人が僕の方に近寄ってくる。
「・・・ごめん、みんな・・・少し席を外すよ・・・」
そう言って僕は部屋からでた。涙が止まらないから部屋にあるトイレに向かった。その途中・・・楓の声が聞こえたような気がしたけど、まあ気にしないでおこう・・・。
ああ・・・落ち着くな・・・でもなんでいきなりこんなに涙が出てくるんだろう?やっぱり親友が死んだからかな?でもなんかそれだけじゃない気もするんだよな・・・ あ、もうそろそろ戻らないと。
ガチャ……
よし!戻るぞ!
「お、優輝!お前どこ行ってたんだ?」
「いや、ちょっとトイレにね!」
「・・・そうか。」
よかった・・・治人にもばれてないみたいだな。さてと、本題に戻らないとな。よし!がんばるぞ!
「それで?犯人は誰なのよ!?」
あ、楓がまた怒ってる・・でもなんでだろ?まあとりあえず解決しなくちゃ。
「あの、楓?」
え、ここで治人がしゃべった。
「なに?」
「なんで楓は犯人を捜そうとしているんだ?」
「だって!透が殺されてるのよ!?」
「ああ、そうだな。」
え・・・なんで治人はそんなことをきくんだろ?なにか理由があるのか?まあ今は推理に集中しよう。とりあえずこのアリバイの証言できる人調べからだな。まず治人からだ!
「なあ、治人!」
「・・・なんだ?」
なんか僕に遮られて不機嫌そう・・・悪いことしたな・・・
「いや、あのさ・・・」
あ、やばいな。全くなんの計画もないぞ。どうしよう・・・
「あの、優輝先輩?」
「あ、はい!なんですか?園香ちゃん!」
「なんで敬語なんですか~?まあいいですけど~。」
あ、やばい。ついつい慌ててしまったな・・・今は推理に集中! あ、そうだ!今楓は不機嫌だったよな!?なら話を逸らすチャンスだ!よしっ!
「・・・えっとさ悠、楓ってなんで犯人を捜そうとしてるんだろうな?」
「は?そんなの決まってるじゃないですか。」
え、決まってるのか・・・知らなかったぞ。よし!これからは気をつけよう!
「え?悠、それ本気でいってるのか!?」
あ、治人も知らないのか。まあ無理もないだろうな・・・。
「ええ。わかってなかったのは2人でしたからね。」
まじかよ・・・それはやばいな・・・。まあでも犯人を見つけられたらいいか!よしっ!気を引き締めるぞ!
「じゃあ悠、話は飛ぶが悠なりの推理を教えてくれ。」
「・・・はい。本当に話がすごく飛びましたね。」
ーーー数分後ーーー
「・・・というわけですよ。わかりましたか?」
あ、そうなんだな。なるほど・・・なるほど?うーん・・・わかったようなそうでもないような・・・とりあえず治人にきいてみよ!
「なあ治人!」
あ!つい声大きくなっちゃった・・・でも仕方ないよな?
「ん?なんだ優輝?」
「あ、いやさ悠の話を聞いても僕理解できなくってもっと簡単に教えてほしいって思ってさ・・・」
よしっ!聞けた!
「ああ、そうだな・・・」
治人が考えてる・・・どんな答えがでるんだろうな・・・気になる・・・。
「・・・まず悠の推理にはおかしなところはない。だから優輝も間違ってるわけじゃないぞ?」
へ!?え、そうなの!?あ、でも言われてみればそうかもしれないな・・・。なら僕も間違ってないのか?じゃあ犯人は誰なんだ?やっぱり楓か?いやでも治人は犯人じゃないっていってるしなあ・・・ってまた違うこと考えてた!今は犯人を捜すんだった!よしっ!集中!
「じゃあ犯人は誰なんだ!?」
「・・・多分~、悠くん・・だと思います~。」
え、やっぱり悠なのか!?どう言うことだ? よしっ!推理再開だ!皆はどんな意見だったんだろ?じゃあまずは楓だな・・・。でも僕の推理が正しければ楓は犯人じゃないはずだけど・・・。よしっ!聞いてみるか!
「なあ皆!」
あ、つい声が大きくなっちゃったな。まあいっか。今はそんなことより推理だな!
「皆はどんな意見だった?」
「・・・そうね、でも犯人は私じゃないわ。」
「そ、そうなんだ・・・」
よしっ!じゃあ次は治人の意見をきいてみよう!
「じゃあ治人は?」
「ああ、俺か?俺は犯人じゃないぞ?」
「僕もです!」
「私も~!」
やっぱりそうきたか・・・。
「ねえ、犯人か犯人じゃないかは聞いてないよ。あくまで意見を聞いてるんだけど。」
「あ、そうなのか。」
「まあいいや。僕、透の事件について調べてみるよ。どうせホテルと森以外行けない訳だし。」
よーし!透のためにも事件の犯人、そして真相を明らかにしないと!
続く・・・
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