第82話 理不尽な要塞
「……瘴壁騎士………………籠るよ」
『………………………………………』
瘴壁騎士が真白の命令で次の行動に出る。
ここで少し瘴壁騎士についてだが、恐らく生配信を観て気付いているのは極少数だけいるだろう。魔刀侍と魔喰い烏の瘴気は、自身の力で生成して相手を弱体化させていたが、瘴壁騎士は瘴気で弱体化どころか生成すらしていない事に。しかし、これはして無いのではなく出来ないのだ。
『邪魂シリーズ』には三種類のタイプがある。
一つ目が、魔刀侍と魔喰い烏の様に相手を瘴気で弱体化させて攻撃する汎用タイプ。これは瘴気の弱体化とスキルのコンボで、広範の相手を殲滅する為の短期戦向けの個体だ。
二つ目が、瘴壁騎士の様に相手を倒して瘴気に変換してスキルを強化させる強化タイプ。これは相手を倒せば倒す程数効果上がるだけだが、汎用タイプにも似た様な事をできる個体もいるが、強化にも限界値があり、強化タイプには限界値は無い為、長期戦向きの個体だ。
三つ目が、簡潔に言うと万能タイプだ。今回は詳しい説明を省くが、このタイプは色々と規格外である。
話しを戻すが、瘴壁騎士が今まで倒したアンデット達は瘴気となり、瘴壁騎士のエネルギーになる。
「瘴壁騎士……【絶対要塞】」
『………ッ!』
真白の合図で、瘴壁騎士の大楯から大量の瘴気が溢れ出し、やがてそれは瘴壁騎士を中心に櫓の周りを高さ5m程の瘴気の壁で囲まれた少し小さい砦ができた。
「掛かってきやがれ。アンデットども」
真白の挑発と共に約10,000のアンデット軍が襲い掛かってくる。
一般的に攻城戦では、攻城側の兵力は守備側の10倍以上必要と言われている。
今の状態は10倍どころか10,000倍以上の差がある。瘴壁騎士の1体に対してアンデットを約10,000体、普通なら勝つ事は不可能なのだが、真白の奥の手である『邪魂シリーズ』だ、負ける筈がない。
アンデット達が砦に向かって突撃していく、しかし、勿論砦の障壁はただの障壁ではなく、【振瘴壁】と【反射瘴壁】を組み合わせたら障壁だ、その為———
『『『『『ガァァ………………』』』』』
———障壁に触れると同時に、振動で粉々になったり魔法などの遠距離攻撃は反射され自分に返ってくる。
因みに、要塞は砦の形になっているが上からの攻撃や侵入は出来ないようにドーム型の障壁が張られている。
アンデット達がどんどん倒されていくがレイドボスは更に数を増やす選択をした。再び【召喚術】で呼び出したアンデットの数とその前に召喚した数と合わせて約25,000体。一応青木ヶ原ダンジョンはS級ダンジョンである。しかし60階層のレイドボスでこれは流石に異常な強さだろう。だが、このレイドボスは、【闇魔法】と【火魔法】は対した魔法は使えず、ただ【魔法攻撃増加】で強化してるだけだ。このレイドボスで厄介なスキルは【召喚術】【統率】【瘴気放出】【呪術】の四つだ。
しかし真白は【瘴気無効】を持っており【瘴気放出】は意味がなく、【呪術】に至っては圧倒的な魔力量でどうとでもなる為全く意味がない。だから真白にとって厄介だと思うスキルは大量にアンデットを召喚する事ができる【召喚術】とアンデット達にバフ付与や連携をし易くする【統率】の二つだ。
しかし、真白は【召喚術】は召喚できる数の限界が決まってると考えている。何故かと言うと、召喚してる数が多い程、【真理の天眼】で見た相手の魔力が不安定になっているからだ。
実はこの考えは正解である。流石に無限に大量の数は召喚できないのだ。
だが、【召喚術】と【統率】がどんなに厄介だろうと真白に……いや、瘴壁騎士には関係無い。むしろ好都合である。
「さぁ、どんどんいくよ」
障壁により倒されたアンデット達は瘴気に変わり、瘴壁騎士が強化されていく。すると瘴気が濃くなり、要塞が砦から西洋風の要塞に大きく変わった。例えて言うなら、ギリシャのロドスみたいな形をした要塞だ。
大きくなった要塞はボスエリアの面積を大きく占領(侵略)して、アンデットの殲滅力を増していく、スキルのお陰でどんどん強くなる為時間を掛ければかける程強くなり要塞も大きくなっていく。
だから瘴壁騎士を倒すには、真白が解放した瞬間初撃で倒すしかない。だが、それには邪魂シリーズ最強の防御力を持つ瘴壁騎士の防御を突破する必要がある。
どれ程かというと、某VRMMO系ノベルの防御全振りした少女が、貫通、斬撃攻撃無効と魔法攻撃耐性(極)に、ある程度力と器用にステータスを振ったくらいの強さだ。
真白の手持ちの邪魂シリーズでも、突破できるのは2体しか居ない。
瘴壁騎士が【絶対要塞】を展開してからそろそろ約40分。レイドボスもアンデット達が倒される度強化されているのに気づいて今は自身で攻撃をしているが、既にボスエリアの九割は瘴壁騎士に占領されているため逃げるに逃げられず、魔法も反射で返されて、そして要塞は少しずつ大きくなっている。
それから更に10分程、完全に逃げ場を失ったレイドボスは自身の魔法攻撃が反射で返される攻撃と持久戦による魔力の消耗によって、抵抗する事も出来ず目の前まで迫る障壁に押し潰されていき敗北した。
「………ん?……ふぁ〜〜ぁ。………やっと終わったか」
「戻って。……封印」
こうして、レイドボスと真白の戦いは終わった。
「ふぅ〜。……やっぱり配信面倒だなぁ。…ていうか、しなくてよくない?」
生配信にも関わらず、そんな事を言う真白は配信をやめて、戦利品を回収してささっと撤収するのであった。
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