第72話 調査 二日目(午前)
「と、言う訳で、もしかしたらあまり深く潜れないかもしれないです」
『そうか。…まあ無理はしないでくれ』
翌日の土曜日の朝、真白は桐島に電話をかけて、依頼の進行速度によっては、あまり深くは潜れないと報告した。
「それとですね、昨日の事故配信のコメントを色々見てたんですけど、どうやら私が大雑把に描いてるマップが何故か結構好評らしんですけど……」
真白は昨日の自分の配信のコメントを色々見返してたら、戦闘以外でかなり好評だったのが自分のマッピングだ。
『ああ……確かに綺麗に纏められていた。…大雑把と言うが、我々はあんなに事細い所まで描かないぞ。正直白岩さんの描いたマップを売って欲しいくらいだ……』
桐島も真白が纏めたマップをかなり高評価している。何度も言うが、真白は大雑把と言うが普通の人からしたらかなり綺麗に纏められている。
そんな物を桐島は冗談で売って欲しいと言ったが———
「良いですよ」
『まぁ、白岩さん無理をさせ………ん? 今なんと?』
「だから、マップを売っても良いですよ」
『! ほ、本当かね!』
———まさかのOKが出た。桐島は真白の負担になるかもと思い冗談で言ったつもりだったのが、本人から了承してくれた。
桐島としては、協会の役員の負担が減り他の仕事に回せるので大助かりだ。
『マッピングをしてたら攻略速度が遅くなるし白岩さんのかなり負担が掛かるのでは?』
「安全第一で攻略するので大丈夫です。マッピングもそこまで負担にならないです」
『…わかった。白岩さんが大丈夫なら大丈夫だろう。よろしく頼む』
「分かりました。…それとですね、今回の依頼はダンジョンの未攻略の階層の調査をカメラで撮影するでしたけど、私がマッピングすると、私の方が手間とかも掛かると思うんですけど…そこら辺の値段交渉はまた後でしましょうか」
『…………白岩さん……考えが龍也君に似ておるぞ……』
真白は桐島の考えが大分かっていたらしい、そこを見透かして値段交渉するのは龍也と考え方がそっくりな真白である。
「それでは時間も惜しいので、私は今からダンジョンに行きます。何かあった場合は連絡させていただきます」
「ああ、よろしく頼む」
桐島との電話のやり取りを終えた真白は、再び青木ヶ原ダンジョンへと向かった。
————————
「はい、攻略完了。………またハズレか〜」
青木ヶ原ダンジョン54階層の階層ボスを倒した真白は、ここまでは調査をしながらでも、順調に攻略を進めていた。
「……まだ11:20か、予想より早く攻略できてるし……………もしかしたら、60階層まで行けるかな?」
真白はホテルを出て、7:00頃からダンジョンに潜っているが、まだ4時間半も経っていないにも関わらず、4階層も攻略してしまった。
今日の真白は、昨日の動画を見て、色々と振り返って、もっと効率よく調査できないかを考えて今日は潜っている。
因みに、カメラはしっかりと『録画モード』にしている。昨日の二の舞にならない様、昨夜説明書をしっかりと読んで使い方を頭の中に叩き込んだ。それはもう受験生が受験勉強のラストスパートを掛けるが如く必死になった。余程事故配信を反省したらしい。
昨夜、龍也から『録画モード』なら後から編集できるからと言われ、あまり視聴者の事は意識する事は無いと言われた真白は、龍也の言う通り、カメラを意識せずに戦っている。
「さて、まずは55階層へと行きますか。55階層の攻略が終わったら、一度地上に戻って昼食を食べてまた潜ろう」
————————
「……………50階層は敢えて避けたけど……やっぱりあるね、レイドボスエリア………」
真白は今、55階層のレイドボスエリアの扉の前にいる。この扉を開けるとレイドボスが居る特殊エリアへと繋がる。
以前の新宿ダンジョンもそうだが、レイドボスは、C級ダンジョンから、5階層毎に現れる特殊エリアだ。そのボスは階層ボスより数倍デカく、厄介なスキルを持っている。
新宿ダンジョンのとき、真白は一人で65階層のレイドボスに挑んで勝利したが、本来は何十人も数を揃えて挑む相手である。
「……本当は中に入って調査したいけど…また何か言われるのはやだし、一応地上に戻って相談かな」
真白は、55階層は階層ボスエリア以外は調査済みだ。しかし、肝心のレイドボスエリアを調査したくとも、前回身内達にあれだけ心配かけて、世界的にも騒ぎになったのだ。迂闊には調査できない。
真白はダンジョンの戦闘時は頭がイカれてるくらい自重しない事があるが、反省する時はするのだ。
「取り敢えず、階層ボスを倒して昼食ついでに相談しよう」
現時刻12:37、真白は青木ヶ原ダンジョンを55階層を攻略を終えて一時地上に戻った。
因みに、55階層の階層ボスも『亡者の邪魂』をドロップしなかった。
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