第46話 お見舞い
SS級ダンジョンスタンピード事件。この事件は世界的に大きな話題になっている。この事件か終息してからそろそろ一週間経つが一向に話題がつかない。
その一番の理由が———
「白ちゃん…いつまで先延ばしにするつもりなんだ?」
———そう、真白が原因である。
スタンピードの終息の後、真白は対策本部の仮設テントに案内され、日本探索者協会の桐島やその他役員に感謝の言葉受けたまでは良かった。
しかし、問題はその後、真白に対しての質問が色々問われた。だが、真白は人見知りで、知り合い以外には緊張して上手く喋る事出来ず。挙げ句の果てに外には報道陣と思われる人達までいて、受け答えできる様子ではなかった。
それを見兼ねた龍也が後日場を設けると説得し、翠と相良が話せる部分は話しておくという事でその場は治った。そして真白は、その場を逃げる様に空を飛んで帰っていった。
真白を知らない桐島は、『本当にあの少女は、さっきまで勇ましく戦ってた少女か?』とギャップがあり過ぎて驚いていた。
真白は無事家に帰ると、父と母、紗奈の3人が温かく迎えてくれた。どうやら、テレビ中継を観ていたらしく、私の全力を見て凄く驚いたら
しい。父と母は『よくやった』、『帰って来てくれてありがとう』と言って、妹の紗奈は、『姉ちゃんすごかった!』と、言ってくれた。
その後、家まで突撃して来た佳織には、色々質問されたり、変態聖…星歌からは、電話で耳が痛くなるほどうるさく問い詰められて、最後は強制的に電話を切った。
そして現在、真白は翠と相良の3人で龍也のお見舞いに来ているが、肝心の真白が未だに情報開示をするのを怖がっているのである。
「真白、龍也の言う通り、いい加減覚悟して情報開示しなさい」
「ましろちゃん、今回は流石に私達は庇いきれないわ」
翠と相良からもずっと同じ事を言われてる。
「まぁ、白ちゃんが先延ばしする理由もなんとなく想像は付くがな」
「どう言う事よ、龍也?」
「ん? 白ちゃんが迷ってるのは、周りの身内や知り合いの心配だって事」
流石龍也、真白の迷いを理解している。
真白は、獅子王の動画であれだけ騒がれていて、3人に迷惑かけている。しかし、今回は家族や友人(佳織とついでに星歌だけ)に迷惑をかけるかもと思うと心配なのだ。
無駄に頭が良いだけに、色々なリスクを考えてしまい、戸惑っている状態なのだ。
「けど、大丈夫だと思うぞ。白ちゃんのお父さんとお母さんも賢いから、上手くやると思うぜ。妹ちゃんもまだ幼ないのに、『戦の剣』のバカ坊主より空気読めるから、心配無いと俺は思うけどな」
「そうよ真白。佳織に関しては、私のクランの選抜組よ。何かあったら私が『お・は・な・し』するわ」
「星歌も大丈夫よ。あの娘は外面だけは完璧だから、ボロは出さないわ」
「もし白ちゃんの家族に何かあったら俺に言ってくれ、『生産組合』が対応する」
3人に言われて、真白は甘える事にした。どうやら、思った以上に精神的に追い詰めあるられて、いつもの癖で1人で抱えて込んでた様だ。
「…ありがとうございます。よろしくお願いします」
「あぁ、任せとけ! 白ちゃんは確かに賢いけどまだ子供だ。こういうのは俺達大人の役目だぜ、…うるさい
「「ぷっ!」」(翠&相良)
「…ふっ! はい! わかりました」
真白は笑って頼る事にした。
「龍也…あなた確か、今日の検査で身体に異常が無かったら退院でしょ」
「おう。相良さんの【治癒魔法】で体の方は全然平気だ。ただ形だけの検査入院しただけだからな。暇だったから、入院中は溜まった仕事をやって、ちょっと苦情の話しをして、時間を過ごしてた」
「石井君、入院中くらい身体を休めなさい。あんだけ無茶な戦闘したんだから…」
今回の事件で大きく変わった事といえば、まず、スタンピードの警戒度についてと生産職の世間の見方についてだ。
真白と龍也、2人の生産職により、世界中が生産職の冷遇の考えが改められ、全体的に徐々に好意的になって来ている。完全にとはいかないけれど、今回の事で生産職冷遇者はかなり減っただろ。龍也の父も自分以上に生産職の貢献度を上げた龍也を褒めたみたいだ。
因みに、龍也の言う苦情の話しとは、例の記者の事だ。しかし、その記者がどうなったかは真白達は知らない。
「あ、……石井さん、情報開示の事なんですけど、まずは探索者協会の会長さんと話をしてから開示しようと思うんですけど、…出来たら一緒に来てくれませんか? 流石に私1人じゃ不安なので…」
「勿論いいぞ。…入院中に大体の仕事は終わらせてあるからな。それぐらい問題無い。白ちゃんは都合が良い日てある?」
「私はいつでも平気です」
「わかった。桐島さんに時間取ってもらう様に、俺から頼んどく。…日付が決まったら連絡する」
「はい。わかりました」
「龍也、私も同行するわ。だからこっちにも連絡して」
「石井君、私にもよろしく」
どうやら翠と相良も同行するらしい。なんだかんだで、真白が心配みたいだ。
取り敢えず、詳しい事は後日連絡する事で、この件は話しは終わった。
「あと石井さん、もう一つ訊きたい事があるんです」
「ん? 何だ白ちゃ———ッ!」
その瞬間、3人は室内が氷点下まで下がった様に錯覚した。
その元凶の真白は、若干微笑んでいるが、殆ど真顔で龍也を睨みつける。
「そういえば、あの会見で私の事を言ってましたけど、なんて言ったか……覚えていますか?」
この後、龍也は検査が始まるまで、真白から色々と文句や不満、小言を言われ、翠と相良は部屋の隅でとばっちりを受けない様にその様子をずっと眺めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます