第15話 決着
真白はグリーブに付与した【縮地】で距離を詰める。獅子王も前脚で反撃してくるが、仮面に付与してある【思考加速】のお陰で躱せる。そのまま獅子王の懐に潜り———
「【蹴撃】!」
———真下から蹴り上げた。
『グゥゥゥゥ!?』
獅子王は悶絶するが体勢を崩しながらも反撃するが、真白の姿が見当たらない。それを疑問に思い身体が止まってしまい隙だらけになった所に———
「【拳撃】!」
———獅子王の顔の横からものすごい力で真白が拳で殴り、獅子王はそのまま横に倒れる。
真白は装備の素材に初めから付いてた【透明化】のスキルを使い素早く獅子王の懐から移動したのだ。流石に虚をつかれた獅子王も直撃を喰らう。
『グゥゥゥ…ガァァァァァァァ!!』
キレた獅子王は大口を開けて咆哮した。しかし、真白にとってその咆哮は、———
「開けたね。大口!」
———待っていた行動だった。
真白の腕の中にはいつの間にか、大きなグレネードランチャーが握られていた。
「これが私の切り札よ!
ズドーン!
真白の撃ったグレネード弾が音速超える速さで獅子王の口から体内に入る。しかし反動が強すぎたのか、真白も後ろに吹き飛び———
「ぐへぇ!」
———仰向けで脚を開き受け身を取る。若い乙女がするような声と姿では無い。
『グゥッ! ウゥゥ…ゥゥゥ!? ガッガァゥゥゥーガァァァァー!! ガァァァァー!!』
肝心の獅子王は真白の撃ったグレネード弾を飲み込んだ。そして直ぐさま異変が起きた。なんと獅子王がその場で苦しそうに地面をのた打ち回る。
真白が使ったレールグレネードランチャー通称レールランチャーは、本来なら着弾して大爆発するが、しかし今回使用した弾は真白が対大型モンスター用に開発した弾である。
その弾は威力はそんなに無いが大型モンスターの口の中に弾を撃ち込み、体内から攻撃するための物である。熱を持った弾が音速超えの速度で気管を焼きながら肺まで入り込み、内側から高圧電流と弾の中に仕込んだ発火オイルを熱で発火させて焼死させる。
たとえどんなに強い防御力があるモンスターでも、体内はやはり脆い。
『グゥゥゥゥー! グゥガァァーグゥゥー…』
しかし獅子王はかなりタフだ、ここまで来たら真白の勝ちはほぼ確定している。けど真白は、どうせ倒すなら直ぐ楽にさせてやろうと思った。
ベルトポーチから長さ4〜5mぐらいの長槍を取り出す。投げ槍の要領で構えて長槍に魔力を流す。そしたら先端のスクリュー状の穂が高速で回転し、
ズサッ!
『ガァッ…ァ………』
ドッシーン!!
長槍は見事眉間を捉え脳まで貫き電流を流し、一瞬で獅子王を仕留めた。
「ハァー…ハァー……なんとか勝てた!」
危ない場面も多かったが、真白がレイドボス相手に勝った。それもソロである。真白は今日この日、史上2人目となる深層レイドボス単独討伐者となった。これは快挙と言える。普通はその事に達成感を感じるはずだが———
「あ! …獅子王の死体が残ってる! 超ラッキー!」
———運良く残っていた獅子王の死体を回収することに喜びを感じている。死体を時空間リュックにしまい。
「ダークテンペスト・ザ・ビーストキング丸ごと、ゲットだよ!!」
楽しそうな顔で死体をしまった。そしてふと周りを見たら、近くに何かが落ちている。近づいて見てみると。どうやらドロップ品の装備のようだ。死体が残ってたからドロップしてないかと思ったらそうではないらしい。
「えーと、何々……『剛力の籠手』、『疾走の靴』、『暴風の魔杖』……ユニーク装備か、でも私は要らないかな…どうするのかは後で考えよ…………私…勝ったんだ…」
そんな事を考える真白だが、今になって勝利の達成感を感じる。かつて自分の兄の命を奪った相手に。
「お兄ちゃん…私、勝ったよ…」
それは天国の兄、賢也に向けての無意識の独り言だったが、真白の声はきっととどいただろう。
「さて、皆んな心配してると思うし…戻るか」
こうして、闇の暴風獅子王と真白の勝負は、真白に群杯が上がり幕を閉じた。
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