第2話  素材収集

 二年後、横浜ダンジョン深層にて


「さっさと倒れなさい、このデカ蜘蛛‼︎」

『キィィィィィィィーーー!』


 バン! バン! バン!


『キィィィィーー』

「単発式の魔力ハンドガンじゃ火力が弱いか。でも火力が高すぎると素材がもったいないし……やっぱ接近戦で頭を突き刺すしか方法はないか」


 純白のコートとリュックに左右4つずつの黒いベルトポーチに黒ブーツの少女白岩真白と、白い体で腹部に赤い斑点模様があり脚と頭部が硬い甲殻で覆われた体長3〜4mの大蜘蛛、インビシブルシルキースパイダーが戦う姿があった。


『キィ……』

「ッ……またを姿消した。でも、魔力の流れで私には丸見えよ!」


バン!


『キィィィィーーーー‼︎』

「あ〜〜〜‼︎ 牽制のつもりが目玉1つ潰しちゃった‼︎ 折角の素材が一つ無駄に!」

『キィィィーーー! キィーーーーー!』

「でも、チャンス!」


 しかし、隙をつくるには十分だった。真白は10m以上の距離を一気に詰めながら腰のベルトポーチから武器を取り出した。


「『ショックレイピア』」


 時空間ベルトポーチから長さ90㎝はあるレイピアを出し、インビシブルシルキースパイダーの脳天目掛けて突き刺した。同時にインビシブルシルキースパイダーの内側から電流が流れる。


「ハッ!」

『ギィィィィィーーィィィー…ィィ……ィ』

「ふぅ〜……よし! インビシブルシルキースパイダー丸ごと、ゲットだよ!!」


 真白は、インビシブルシルキースパイダーの死体を時空間リュックにしまう。

 ちなみに、ダンジョンモンスターは普通は倒したら死体は残らず、魔石と一部の素材だけがドロップされる。しかし例外があり、モンスターの傷を一定以下の傷で内側からの攻撃したら、一部のモンスターを除き、死体全てが残る。


「ふぅ〜、なんとか収集できた。けど魔力ハンドガンじゃ火力不足か…レイピアもそろそろメンテナンスしないとダメね……『貫通強化・大』と『電流強化・中』『超振動』を付与してても、深層じゃ限界だね」


 真白は一人でいろいろ改善策を考えているが、錬金術師である。世間一般の錬金術師は、素材やアイテムに付与するのがメインである。それに、2つ以上の付与ができる者は極々少数である。まして、戦闘をソロでする頭のおかしい錬金術師など世界中探しても真白だけである。


「さて、目的の素材は収集できたから、今日はもう帰ろう!」


 そんな事も知らずに、素材が収集できたことでご機嫌な真白はそのまま帰路についた。


「さて、帰ったらどうしようかな……インビシブルシルクキーパイダーの甲殻は軽くて防御力に優れるし、表面の外殻には【透明化】がついてるし…目玉や毒腺は薬や触媒に使えるよね……(ブツブツ)」


 帰りながら小声で独り言を呟きながら歩く真白。ちなみにここは深層の63階層である。

 ダンジョンは1〜5階層が最上層、6〜20階層が上層、21〜40階層が中層、41〜60階層が下層、61階層以降が深層である。

 錬金術師がソロで来れるような所ではない。しかし真白はこの二年間、素材収集との為に、試行錯誤しと研究、努力、執念でここまで来れたのである。世間からしたら真白は自殺願望や頭がイカれてるとしか思われない。そんな頭がぶっ飛んだ高校1年生の少女である。

 そんな少女は、戦闘と素材収集を終え、転移陣でダンジョンを出る。

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