第6話玲奈の転居①

翌朝は、快晴。

午前7時に、玲奈の部屋のドアにノック音。

玲奈がドアを開けると桜だった。

「玲奈ちゃん、みんなで朝ごはん」

「ついでに、自己紹介して」

玲奈が食卓に着くと、すでに全員が座って、待っていた。

ママから、すでに玲奈の話は、聞かされていたらしい。

玲奈が自己紹介(少し緊張気味)をすると、いろんな声がかかって来る。


髭が濃くて、大柄の男。

「僕は、森本道也、イタリアンのシェフ、近くの店、玲奈ちゃんも来てね」

「それから、朝ごはんは、僕が作る、玲奈ちゃんは、明日から手伝って欲しいな」


玲奈は「あ、はい、わかりました」と、テーブルの上を見た。

確かに華やかな(フルーツたっぷり)サラダ、湯気が立つトマトチーズリゾット、焼き立てのビスコッティ、大きなオムレツが置かれている。


その次は、ショートカットの大人美女だった。

「私は、宮下洋子、画家をしています、俊君と学部は違うけれど、同じ上野の大学」

「今度、銀座で個展やるの、もし、暇があれば、手伝って欲しいな」

「玲奈ちゃんも可愛いから、モデルにしたい」


玲奈は、恥ずかしかったけれど、「わかりました」と、素直に受けた。

とにかく、「頼れるお姉さん感」もある。(今日の引っ越しを手伝ってくれる、断れない)


その次も女性、玲奈より少し年上の美少女風、キビキビと自己紹介。

「私は、川田美紀、警察官で、中野警察署に勤務しているの」

「で、玲奈ちゃんのSNSとストーカー被害、気になるから、私も引っ越しの時に、警護するよ」


玲奈は、「恐れ多い」と思ったけれど、ありがたいと思った。

「助かります」と素直に頭を下げた。(川田美紀のキビキビ感が、気持ちよかった)


最後は、精悍な感じの若い男性。

「私は、奥村達夫、弁護士。杉田俊の従兄になります」

「近くの弁護士事務所にいる、僕も玲奈ちゃんの案件が気になる」

「おそらく、引っ越しの時に、何かわかるかもしれない」

(ママと、桜、俊は昨晩の時点で聞かされていたので、省略した)


朝食が終わり、玲奈と桜は並んで食器洗い、それを終えると、引っ越し本番になった。

リーダーは弁護士の奥村達夫のようで、ポンポンと指示を出す。

「4トントラックを手配した」

「玲奈さんが助手席、一応黒サングラスと黒マスクして」

「俊君と、洋子さんは、常に周囲を見張って、変な奴を見かけたらスマホ撮影も」

「美紀さんは、警察で、先回りして警戒措置」

(玲奈は、驚くやら申し訳ないやらで、言葉が出ない)


その玲奈の肩をママが揉んだ。

「みんなプロばかり、安心して」

「引っ越し代金は、玲奈ちゃんを苛めた奴らから、たっぷり取るよ」


玲奈が、また驚いていると、桜が笑った。

「必殺仕事人と思えばいいよ」

「私も、昔お世話になった」


川田美紀が声をかけて来た。

「少しスマホ貸して欲しいの」

「それで、相手の動きがわかる」


玲奈がスマホを渡すと、川田美紀は黒い鞄からタブレットを取り出し、つないだ。

タブレットの画面に、様々な画像が映し出された。

奥村達夫が、フフンと笑う。

「もう、捕まえたようなものかな」

「馬鹿な奴だね、こいつ」

「実にわかりやすい」

川田美紀は、満面の笑み。

「わ・・・表彰されるかも」

「戻って来たら、森本シェフ、表彰パーティーお願い」

(森本シェフはクールサインを出している)


玲奈は、ついて行けずに、「口をポカンと開けているだけ」に、なっている。

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