ライブバー「ボレロ」と集う人たち
舞夢
プロローグ
そのライブバーは、中央線中野駅から歩いて約5分。
店名は「ボレロ」。
命名の由来は、不詳。
いつからか、このライブバーのテーマ曲になっている。
客席数は最大120。
かつてはキャバレーだったのを改装している。
店主(ママ)は黒田良子。
35歳、元AV女優。
今も往時と変わらぬ美貌と体型を保持している。
性格は、大らかで、やさしい。
その人柄を慕って、元AV女優、現役AV女優も、客として来る。
(たまり場にもなっている)
専属のミュージシャンは、杉田俊。
26歳。ピアノ、ヴァイオリン、ギターに卓越した技量を持つ。
元々は、都内有名フィルの期待されたヴァイオリニスト。
(何らかのトラブルで辞めたとのことで、真相は不明、本人も言わない)
このライブバー専属になった理由は、前任のピアニスト山下元が辞めて、甥の杉田俊を推薦したため。(山下元は、新しくツアーバンドに参加した)
さて、杉田俊は、音楽以外に、不思議な魅力というのか、技量を持つ。
見たところ、容姿は、中肉中背、美男でもなくブ男でもない。
(しいて言えば、目が大きい)
そんな杉田俊の、不思議な魅力、技量とは、「説得力」「相談力」・・・つまり、「お悩み相談対応」に、ある。
ママの黒田良子に聞くと
「なんとなく、俊君に愚痴を言っちゃうのよ」
「すると俊君は、フンフンと聞いて」
「不思議な格言?変わった言葉で、こうなんじゃない?と言ってくれるの」
「それが、不思議に面白くてさ、はぁ・・・と」
「また、相談したくなるの」
「お客さんも、いつの間にか、その相談目当てで来る人で増えてね」
「まあ、店として、もう、手放しません(笑)」
と喜んでいる。
それを、当の俊に聞くと
「・・・相談して来るから」
「フンフンと聞いて、思いついた言葉を返しているだけです」
「喜んでくれれば、うれしいです」
と、素っ気ない。
俊に相談をかけた客の反応は、様々。
「哲学?そんな言葉を言われたなあ、難しいようで、ストンと納得した」
「禅僧みたいだった、厳しいようで、でも、そうかな、と気持ちが楽になった」
「いや・・・神父さんだよ、イエスの言葉だったし」
「うーん・・・源氏物語から言われた・・・へえ・・・と、面白かった、悩んでいること忘れた」
「私なんて、人麻呂の話、何でその話?と思ったけれど、見事にはまった」
・・・・・・・・・
限りないので省略。
※店の簡単な紹介は、ここまで。
それでは、本編に入ります。
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