第5話 底辺配信者、同接者が増える。

 俺は星野さんたち3人とフロアボスを目指すこととなった。


「ドローン型のカメラが2台飛んでるって違和感しかないな」


 俺たちの近くには俺の配信と『雪月花』の配信でドローン型のカメラが2台飛んでる。


「それにしてもアタシらの配信をリアルタイムで見てる人が200万人を超えたなんて」

「ウチも驚きました!過去最高の同接者数です!」

「しかも現在進行形で同接者が増え続けてるわ。視聴者の皆様がSNSで拡散してくれたおかげね」


 どうやら『雪月花』の配信をリアルタイムで見てる人が200万人を超えたらしい。


〈お兄ちゃんも負けてられないね!〉

〈ユウ、もう一回『雪月花』のチャンネルで自己紹介してきて。『雪月花』のチャンネルで視聴してる人を奪うために〉


「俺は2人が見てくれるだけで嬉しいから、視聴者の数で対抗意識を持たなくていいの!」


〈それは無理だよ、お兄ちゃん!だって現在の視聴者が150万人を超えてるんだよ!こんなの気にするなって方が無理だよ!〉

〈私もこれを無視することはできない〉


「ごめん、正直俺も気にしまくってる」


 美月たちに「気にするな」と言いつつも、自分もガッツリ気になっている。

 さすがの俺も150万という数字を無視することはできなかった。

 今も〈頑張ってください!〉や〈瞬殺、期待してます!〉という、美月と紗枝以外からのコメントが多く見られる。


 俺がスマホを触りつつコメントを見ていると、「ガァァァァッ!!!」という咆哮が前方から聞こえてくる。

 その咆哮に反応して星野さんたちは迎撃態勢に入る。


「待ってください。ここは俺だけで充分なので、3人は休んでていいですよ」


 迎撃態勢に入っている3人に向けて声をかけ、俺は3人の前に立つ。


「なっ!さっきは瞬殺できたけど今回も瞬殺できるとは限らないぞ!ここは私たちと連携した方がいい!」

「大丈夫です。先程、星野さんたちの戦いを見てましたが、星野さんたちはコイツの弱点を攻撃できていませんでした。だから討伐に苦戦したんだと思います。弱点さえ攻撃できれば雑魚モンスターですから」

「弱点だと?」

「はい。まぁ、見ててください」


 俺は大きな口を開けてコチラに突っ込んでくる『空飛ぶトカゲ』を視認し、腰にある剣の柄を握る。


「コイツの弱点は顔です。顔から尻尾にかけての直線上は鱗の数が少なく、とても柔らかいです。なので………はぁーっ!」


 俺はトカゲをギリギリまで引き付け、一気に剣を引き抜く。

 すると、先ほどと同様、真っ二つに切り裂かれ、魔石を残して消える。


「こんな感じで瞬殺することができます」

「「「………」」」


〈できるかぁぁぁぁ!!!!〉

〈え、今何が起こったんだ!?男に突っ込んでたレッドドラゴンが突然真っ二つに切り裂かれたんだけど!?〉

〈おそらく剣で斬ったらしいが、剣筋が全く見えなかったぞ?〉

〈お兄ちゃんカッコいいー!やっぱりこのモンスターって弱いね!〉

〈所詮は雑魚モンスター。このペースでどんどん倒していこう〉

〈おい、コメント欄にS級モンスターを雑魚扱いしてる奴いるんだけど〉

〈あ、その2人のコメントは無視してくれ〉

〈無視できるかっ!めっちゃ気になるわ!〉


「そしてコイツの良い点は弱点を晒しながら突っ込んでくれる点ですね。一歩も動かずに討伐できるので、俺の中では雑魚モンスターの部類です」

「「「………」」」


〈ヤベぇよ。想像以上にヤベぇ奴だよ〉

〈ホントにレッドドラゴンを瞬殺してたよ。SNSで出回ってた情報、真実だったのかよ〉

〈Wow!!japanese “samurai サムライ” are so cool!!〉

〈めっちゃ褒めるやん、この外人〉

〈ついに外国の人も視聴し始めたか。この配信、ヤベな〉


 俺はコイツが雑魚モンスターであることを説明するが、星野さんたちの反応がない。


「と、とりあえず、星野さんから順に実戦してみましょうか」

「できねぇよ!」


 鬼気迫る感じでツッコまれる。


「アタシは裕哉くんのように瞬殺できねぇから!“ガブっ!”と食べられるだけだから!」

「確かにミスをすれば“かぷっ!”と食べられるかもしれません」

「いや“ガブっ!”と食べられるわ!見るからに“かぷっ!”と甘噛みしてくれる奴じゃねぇだろ!」

「…………??」

「なんでアタシの言ってることがわかんねぇんだよ!」


〈いやホントそれww〉

〈いつの間にか愛菜ちゃんがツッコミキャラになってるなww〉

〈あれ?いつから『雪月花』のチャンネルは漫才チャンネルになったんだ?〉

〈なってねぇよww〉


「と、とにかく、アタシたちにレッドドラゴンを瞬殺することはできないし、討伐することもできない!」

「ウチら3人だとS級モンスターには勝てません!」

「普通、S級モンスターの討伐は何十人もの冒険者が力を合わせて討伐するの!私たち3人で挑んでも負けるだけなのよ!」

「そ、そんなことはないと思いますが、わかりました。道中のモンスターは俺が倒します」


 俺は星野さんたちの迫力に負け、レクチャーをやめる。


(なんでだろ?飛んでるモンスターが苦手だから勝てないのかな?自分から弱点晒して突っ込んでくるから簡単に討伐できるんだけどなぁ)


 意地でも戦いたくないという意志を感じ、『空飛ぶトカゲ』と戦うよう促すのをやめた。




〜『雪月花』視聴者視点〜


〈おい、いつの間にか同接者が1000万人を超えてたぞ〉

〈数分前まで200万人だったのに〉

〈SNSで拡散されまくって、今では世界中にレッドドラゴンを瞬殺した映像が流れてるからな。まだまだ増えるだろ〉

〈どこまで増えるか楽しみだな〉

〈俺の予想は5000万人だ〉

〈いや1億いくんじゃね?〉

〈この配信、『雪月花』と『yu-ya』のチャンネルで同時に配信してるから、視聴者が割れてしまうのが残念だ〉

〈1つのチャンネルで配信してたら、この時点で2000万人が同接してただろうな〉


 等々、視聴を楽しむと同時に、どこまで同接者が増えるか楽しんでる人が増えた。

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